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2012 年度 実施状況報告書

神経障害性疼痛維持機構の構造的および機能的変化の同時イメージング

研究課題

研究課題/領域番号 24590735
研究種目

基盤研究(C)

研究機関関西医科大学

研究代表者

松村 伸治  関西医科大学, 医学部, 講師 (70276393)

研究分担者 伊藤 誠二  関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
西田 和彦  関西医科大学, 医学部, 助教 (80448026)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード多光子励起顕微鏡 / in vivo標本 / 脊髄 / カルシウム / イメージング / in utero遺伝子導入法 / 痛み / 神経障害性疼痛
研究概要

神経障害性疼痛の発生機序に大きな役割を担うと考えられる脊髄後角内の神経可塑性を伴う感覚情報伝達系の機能異常に焦点を絞り、in vivo脊髄標本を用いたバイオイメージング法により体性感覚情報伝達神経回路網の構造とその活動を経時的に同時に可視化している。興奮性と抑制性介在ニューロンを選択的にイメージングして刺激-応答地図を作成し、その地図で触覚・圧・温・冷と痛覚がどう違うかを解析、さらに、疼痛モデルにおいて疼痛維持の可塑性形成に関与するニューロンの形態学的変化と機能的変化の連関を解明できれば、触覚のような非侵害刺激を痛覚と誤認してしまうアロディニアがなぜ生じるかの理解の糸口となる。ニューロン特異的なプロモーター遺伝子を用いて細胞特異的に発現する蛍光カルシウムプローブのCameleon ファミリータンパク遺伝子を脊髄にin utero遺伝子導入法により導入したマウス作製に成功し、そのマウスの多光子励起顕微鏡を用いたin vivo観察により疼痛情報伝達の場である膠様質層を含む3次元再構築画像を取得した。痛み刺激、接触刺激、熱刺激に反応するニューロンを記録し、その形態と反応の関係を明らかにしつつ有る。健常時のニューロンネットワークにおける刺激-応答地図の作製、さらに、疼痛ニューロン回路地図の作製の足がかりを得た。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹に起因する皮膚病変の消失後でも持続する自発痛およびアロディニアである。NMDA受容体は、神経障害性疼痛だけでなく帯状疱疹後疼痛に関与することが示唆されてきたが神経機構は不明であったが、 NR2BサブユニットのTyr1472におけるリン酸化が、神経の損傷に起因する帯状疱疹後アロディニアの発症に関与している事を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. 脊髄後角ニューロンの同定と感覚刺激-応答地図の作成(松村、伊藤、西田)
1) 標的ニューロン特異的に蛍光タンパク質を発現するマウスの作製(西田) ニューロン特異的なプロモーター遺伝子を用いて細胞特異的に発現する蛍光タンパク遺伝子を脊髄にin utero遺伝子導入法により導入した。脊髄の中心管に直接ベクターを注入することは困難であるが、より確実に脊髄腰膨大部に遺伝子導入出来るように遺伝子導入法の条件検討を行った結果、脊髄腰膨大部後角ニューロン特異的に蛍光タンパク発現が可能となった。
2) in vivo標本作製法の確立(松村) 脊髄は髄腔内で髄腔液中に浮いている状態であるので呼吸や心拍の影響を受け、それらの振動ノイズをイメージングに耐えられる程度に抑えるために、動物麻酔法、椎弓削除法、脊椎固定法の条件検討を行い、皮膚つまみ刺激でカルシウム濃度増大が惹起されるニューロン観察に成功した。
2. 脊髄腰膨大部後角ニューロン回路の3次元観察(松村、伊藤) 刺激-応答地図を作成するために脊髄における後肢足底の1次感覚性ニューロンの支配領域と脊髄の2次感覚ニューロン/介在性ニューロンの分布、さらにそのニューロンの中枢での支配領域を確認を試みているが、まずコレラトキシンBに蛍光プローブを重合させたもので末梢からのトレースによる支配領域を可視化する事が出来た。
3. 脊髄ニューロンからの刺激応答反応の記録(松村、西田) 脊髄ニューロンの刺激応答反応を記録するために多光子励起顕微鏡を用いたカルシウムイメージング法にて記録することに成功した。1.の導入法を用いニューロン特異的にカルシウムプローブタンパクのCameleon ファミリータンパクを発現する遺伝子導入マウスの作製に成功した。

今後の研究の推進方策

1. 脊髄ニューロンからの刺激応答反応の記録の継続(松村、西田) 脊髄における一次感覚ニューロンからの情報伝達は興奮性神経伝達物質グルタミン酸を介しており、二次ニューロンのNMDA受容体を活性化し、細胞内カルシウム濃度を増大する。そこで、刺激応答反応を多光子励起顕微鏡を用いたカルシウムイメージング法にて記録を行っておりそれを継続する。構造的なマッピングと平行して、後肢への侵害・非侵害性刺激に応答する脊髄ニューロンを解析し、3次元刺激-応答地図を作成する。in vivo patch-clamp法もカルシウムイメージング中に行い、カルシウム動態と電気的活動を比較検討し、カルシウムイメージングのニューロン活動機能の指標としての性格付けを精確に行う。また、その刺激応答する脊髄ニューロンが中枢のどの部位を支配するかを、あらかじめ傍小脳脚核や中脳水道周囲灰白質に蛍光色素を注入し脊髄後角で蛍光を発するニューロンを同定し、末梢からのトレースによる支配領域可視化とあわせて構造的な疼痛ニューロン回路地図の作製を試みる。
2. 炎症性疼痛モデル動物脊髄のニューロンの形態的および機能的変化の経時的追跡(松村、伊藤、西田)
現在進行中の刺激-応答地図により明らかにしたニューロンネットワークをもとに、急性の疼痛について用い経時的にin vivo観察し解析する。Thy1-YFPマウスを用いてカラゲニンやCFA等起炎剤の後肢への投与による疼痛モデルを作製し、神経線維にみられるスパイン様構造などに注目して形態的変化を追跡する。起炎剤投与部位の1次感覚性ニューロンの脊髄における支配領域は、投与予定部位にあらかじめDiI等の蛍光色素を注入しておいて脊髄内で確認する。炎症刺激に伴うニューロンネットワークの形態変化を4次元的に解析をおこなう。

次年度の研究費の使用計画

in utero導入法の利点を充分に活用し、カルシウムプローブタンパクや発現プロモーターをうまく組み合わせ、ベクターの設計変更を施し研究遂行にあたるマウスを作製する。そのために必要なマウス、試薬類を購入する。マウスの飼育に必要な費用を執行する。イメージングに必要な装置部品を補充する。生理学的な実験や薬理学的な実験に必要な試薬類、実験器具を購入する。3次元立体画像の経時的カルシウムイメージングのデータは非常に膨大となる。貴重なデータを保全し、効率的に解析をするために本研究専用に記憶媒体をはじめとしたハードウエアおよびソフトウエアを必要に応じて購入する。今までの研究成果を発表するために参加する国内外の学会参加の旅費を執行する。また、論文投稿に必要な諸経費を執行する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] The action site of the synthetic kainoid (2S,3R,4R)-3-carboxymethyl-4-(4- methylphenylthio)pyrrolidine-2-carboxylic acid (PSPA-4), an analogue of Japanese mushroom poison acromelic acid, for allodynia (tactile pain).2013

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki S, Minami T, Mizuma H, Kanazawa M, Doi H, Matsumura S, Lu J, Onoe H, Furuta K, Suzuki M, Ito S.
    • 雑誌名

      Eur J Pharmacol

      巻: 708 ページ: in press

    • DOI

      10.1016/j.ejphar.2012.10.023.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel Strategy for the Control of Postoperative Pain: Long-Lasting Effect of an Implanted Analgesic Hydrogel in a Rat Model of Postoperative Pain.2012

    • 著者名/発表者名
      Araki Y, Kaibori M, Matsumura S, Kwon AH, Ito S.
    • 雑誌名

      Anesth Analg

      巻: 114 ページ: 1338-1345

    • DOI

      10.1213/ANE.0b013e31824b26a2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Involvement of Tyr1472 phosphorylation of NMDA receptor NR2B subunit in postherpetic neuralgia in model mice.2012

    • 著者名/発表者名
      Unezaki S, Sasaki A, Mabuchi T, Matsumura S, Katano T, Nakazawa T, Nishio N, Andoh T, Yamamoto T, Nakatsuka T, Kuraishi Y, Ito S.
    • 雑誌名

      Mol Pain

      巻: 8 ページ: 59

    • DOI

      10.1186/1744-8069-8-59.

    • 査読あり
  • [学会発表] Developmental regulation of RNA editing in mouse dorsal root ganglion.2012

    • 著者名/発表者名
      Uchida H, Matsumura S, Ito S
    • 学会等名
      The 42th Annual meeting of Society for Neuroscience
    • 発表場所
      New Orleans, U.S.A.
    • 年月日
      20121013-20121017
  • [学会発表] The action site of the systhenic kainoid (2S, 3R, 4R)-3-carboxymethyl-4-(4-methylphenylyhio) pyrolidine-2-carboxylic acid (PSPA-4), an analogue of Japanese mushuroom poison acromelic acid, for allodynia (tactile pain).2012

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki S, Minami T, Mizumura H,Kanzawa M, Doi H, Matsumura S, Lu J, Onoe H, Furuta K, Suzuki M, Ito S
    • 学会等名
      14th World Congress on Pain
    • 発表場所
      Milan, Itary
    • 年月日
      20120827-20120831
  • [学会発表] Characterization of postherpetic neuralgia in mice with knock-in mutation of NMDA receptor.2012

    • 著者名/発表者名
      Ito S, Sasaki A, Unezaki S, Andoh T, Matsumura S, Katano T, Nishio N, Nakatsuka T, Kuraishi Y, Minami, T
    • 学会等名
      14th World Congress on Pain
    • 発表場所
      Milan, Itary
    • 年月日
      20120827-20120831
  • [学会発表] Comparison of mechanisms of allodynia induced by acromelic acid between early and late phases.2012

    • 著者名/発表者名
      Omoto H, Minami T, Matsumura S, Miyazaki S, Ito S
    • 学会等名
      14th World Congress on Pain
    • 発表場所
      Milan, Itary
    • 年月日
      20120827-20120831

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公開日: 2014-07-24  

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