研究課題
脊髄後角内の神経可塑性を伴う感覚情報伝達系の機能異常は、神経障害性疼痛の発生機序に大きな役割を担う。in vivo脊髄標本を用いたバイオイメージング法により体性感覚情報伝達神経回路網の構造とその活動を経時的に同時に可視化した。疼痛モデルにおいて疼痛維持の可塑性形成に関与するニューロンの形態学的変化と機能的変化の連関を解明するために完全フロインドアジュバント(CFA)を用いた炎症疼痛モデルマウスを作製し脊髄後角ニューロンにおける形態変化を追跡し、電気生理学的結果と比較した。Thy1-YFPトランスジェニックマウスを用いたin vivo標本脊髄後角ニューロンの多光子励起顕微鏡による形態観察により、CFA投与によるL5脊髄ニューロンの経時的形態変化の追跡に成功した。ニューロンからの神経突起にspine様構造の増加が投与後60分から現れる事が明らかとなった。また、神経線維上に観られるswellingが経時的に膨大するした。細胞体からのびる線維上に観られる構造のほかに、斑点状のシナプスマーカーと共局在する構造が増大した。個々の個体における斑点の数はばらつきが有り、リアルタイムに同一個体で追跡する事によりその変化を初めてとらえる事が出来た。CFAにより誘導された斑点の出現に対するグルタミン酸受容体拮抗薬の効果を調べたところ、AMPA/kainate受容体およびNMDA受容体を阻害すると斑点に変化が無かった。Thy1-YFPマウスは後根神経節ニューロンも蛍光を発するので斑点が1次感覚神経の軸索か上か脊髄ニューロンの神経突起に存在するか判別できなかったが、in utero遺伝子導入法により脊髄後角ニューロンのみに特異的に蛍光タンパク質を発現させたマウス標本でも同様の結果を得たので、脊髄ニューロンにおける形態変化がグルタミン酸作動性ニューロンの活動により炎症疼痛時に引き起こされていることをリアルタイムで明らかにした。
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