研究課題/領域番号 |
24590736
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
西田 和彦 関西医科大学, 医学部, 助教 (80448026)
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研究分担者 |
松村 伸治 関西医科大学, 医学部, 講師 (70276393)
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脊髄 / カルシウムイメージング / 疼痛 |
研究概要 |
本研究では皮膚の感覚刺激が脊髄後角ニューロンにどのように伝えられるのか、また脊髄後角ニューロンがどのような情報処理をしているのかを明らかにすることを目的として、マウス脊髄後角ニューロンのin vivoカルシウムイメージングの系を構築した。まず脊髄後角ニューロンにカルシウムインディケーター蛋白質を発現させるためにマウス胎児子宮内電気穿孔法の系を確立した。次にこの遺伝子発現系を用いてカルシウムインディケーター蛋白質をマウス脊髄に発現させ、生後8週齢の導入マウスの脊髄後角ニューロンを二光子励起顕微鏡により観察する系を確立した。その結果、疼痛、接触、熱刺激により誘導される脊髄後角ニューロンの神経活動をin vivoカルシウムイメージングを指標に測定することに成功した。さらに、カルシウムインディケーター発現ニューロンの脊髄後角における三次元的分布を解析することにより、神経活動が認められるニューロンの細胞体の位置と刺激の種類の間に相関があることを見出した。 さらに脊髄後角の細胞種特異的なカルシウムイメージングを可能にするためのレポータートランスジェニックマウスの作製を理研CDB動物資源開発室との共同開発により行った。このレポーターマウスはCre依存的にカルシウムインディケーター蛋白質を誘導発現できるものであり、今後、脊髄後角の神経細胞種特異的にCreを発現するドライバーマウスとの交配を計画している。 本研究の昨年度の成果は、脊髄後角における多数のニューロンの神経活動がin vivoで解析可能となった点において大変意義深いものであり、今後に続く研究と合わせて脊髄後角神経回路による情報処理メカニズムの解明に大きく貢献するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、神経回路網を蛍光可視化するマウスとしては、経シナプストレーサーWGAとCreリコンビナーゼの融合蛋白質を発現するマウスを構築し、WGA-Creのシナプス越え、CreによるloxP領域の遺伝子組み換え、組み換えによる蛍光蛋白質遺伝子の誘導発現の連鎖によって、脊髄後角ニューロンの神経回路を可視化させる計画であった。しかし、大脳皮質へのWGA-Creの一過性発現系を用いた予備実験の結果より、WGA-Creのシナプス越えは確認されず、方針転換することにした。 具体的には当研究室で確立しつつあったin vivoカルシウムイメージングの系を用いて脊髄後角における多数の神経細胞の活動を一度に測定することにより、その神経活動の三次元的なパターンを明らかにすること、神経細胞種特異的なカルシウムイメージングを行い、その神経活動パターンを調べること、さらに、細胞種特異的に神経活動を抑制させた時に脊髄後角の神経活動のパターンにどのような変化が起こるのかを解析することの三点が修正したプランの大きな柱である。 そのような目的を達成するために、昨年度に達成した成果、すなわちマウス脊髄でのin vivoカルシウムイメージングによる脊髄後角ニューロンの神経活動の測定が可能になったことは大変重要な一歩である。今後、興奮性、抑制性介在ニューロン特異的な神経活動の抑制系が確立されれば、脊髄後角における介在ニューロンの役割の解明に大きくつながる。 したがって、方針転換を余儀なくされたとはいえ、当初の目的である脊髄後角ニューロンの神経回路網の解明に大きく道を開く研究の進展が見られているという意味において「おおむね順調に進展している」という自己評価をするに至った。
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今後の研究の推進方策 |
第一の方針としては昨年度開発したマウス脊髄in vivoカルシウムイメージングの系、また昨年度作製したカルシウムインディケーター蛋白質をコンディショナルに発現するレポータートランスジェニックマウスを用いて、脊髄後角の神経細胞種特異的なカルシウムイメージングを進めていく。脊髄後角の興奮性、抑制性介在ニューロンに特異的にCreを発現するドライバーマウスとしてTlx3-Cre、Pax2-Creトランスジェニックマウスを用い、レポータートランスジェニックマウスと交配させる。交配マウスを用いたin vivoカルシウムイメージングを行うことにより、興奮性、抑制性ニューロンの皮膚感覚刺激依存的な神経活動パターンにどのような特徴があるのかを明らかにする。 第二にハロロドプシン(NpHR3.0)をコンディショナルに発現するレポーターマウスを、上記のTlx3-Cre、Pax2-Creマウスと交配させて、興奮性、抑制性介在ニューロン特異的にハロロドプシンを発現させるマウスを作製する。次にハロロドプシンを光依存的に活性化して過分極を起こし、神経活動を抑制する系を確立する。このマウスのハロロドプシン発現ニューロンの活動を抑制させた際に、脊髄後角ニューロンの活動パターンにどのような変化が見られるのかについて、in vivoカルシウムイメージングの系により解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画の主なものを以下に記した。 上記の推進方策に則り、興奮性、抑制性介在ニューロン特異的にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウス(Tlx3-Cre、Pax2-Cre)、またコンディショナルにハロロドプシンを発現させるレポーターマウス(ROSA26-loxP-stop-loxP-NpHR3.0)をMMRRC社より購入することを計画している。 さらに、レポーターマウスに光を照射するためのレーザー照射システムの購入も合わせて検討している。 また、上記の遺伝子改変マウス、および子宮内電気穿孔法によるカルシウムインディケーター遺伝子を発現させるための野生型マウスの購入も計画している。 また遺伝子改変マウスのゲノム遺伝子のチェックのための分子生物学的試薬、また細胞種特異的発現の検証のための抗体等の購入も計画している。
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