研究課題/領域番号 |
24590738
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 公道 京都大学, 薬学研究科(研究院), 名誉教授 (80025709)
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研究分担者 |
井手 聡一郎 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30389118)
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キーワード | オピオイド / 鎮痛 / 麻薬拮抗性鎮痛薬 / ノルアドレナリントランスポーター / モルヒネ / トラマドール / 抑うつ |
研究概要 |
抑うつ・不安などの負情動が、痛みの感覚的側面に影響を与えることは、広く認識されつつあるが、負情動存在下での鎮痛薬の作用変化の有無やその機構は未だに不明瞭であり、機構の解明とそれらの知見を基盤とした疼痛治療が求められている。そこで本研究では、抑うつ・不安状態における種々のオピオイド鎮痛薬の抗侵害受容作用特性と、その分子機構を解明することを目的とし、本邦で臨床使用されているオピオイド鎮痛薬の行動薬理学的解析並びにin vitro解析を行う。本年度は、chronic mild stress(CMS)を5週間連続で負荷することにより、抑うつモデル動物の作製を試み、強制水泳試験ならびに尾懸垂試験法のいずれにおいても無動時間の延長(抑うつ様行動)を示し、一方で高架式十字迷路試験法においては不安様行動を示さない、特徴的なモデルマウスを得た。さらに昨年度の結果よりヒト型ノルアドレナリントランスポーター(NET)阻害活性に差があるトラマドールとモルヒネに焦点を絞り、抗熱的侵害受容作用(ホットプレート試験並びにテールフリック試験)の変化に関する検討を行った。ホットプレート試験においてCMS負荷群は対照群と比較して、モルヒネ3 mg/kgを投与した際の鎮痛効果が有意に低かった。しかし、テールフリック試験においてはモルヒネの投与量に関わらずCMS群と対照群との間に変化は見られなかった。また、トラマドールを投与した際には、両試験において、CMS群と対照群との間に有意な変化は見られなかった。これらの結果は、抑うつ状態がモルヒネの鎮痛作用に変化を及ぼしていることを示唆している。また、ホットプレート試験においてのみモルヒネの鎮痛作用の減少が見られたことから、CMS負荷により上位中枢を介したモルヒネの鎮痛作用機構に変化が引き起こされた可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り抑うつモデル動物の作製法を確立し、その表現型妥当性を確認した。また、当該モデル動物において、モルヒネによる鎮痛効果に変化が見られることを明らかにするとともに、作用機序の異なるトラマドールでは鎮痛効果に変化が見られないことも明らかにしたため、次年度以降、抑うつモデル動物においてどのような神経可塑的変化が引き起こされているのかを明らかにするための手がかりを得ている。このため、全体としては、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果より、抑うつモデル動物において、特にモノアミンを介した神経情報伝達に可塑的変化が生じている可能性が示唆されており、当初予定ではオピオイド受容体欠損マウスを用いた解析を行う予定であったが、モノアミントランスポーター阻害薬を用いた検討を主体として次年度の研究を行うように一部計画の変更を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画当初行う予定であった研究分担者との研究打合せのうち1回が、研究分担者の大学業務の都合(学内での研究室移転)のため次年度に延期となったため。 研究分担者との研究打合せのための国内旅費として使用する予定である。
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