研究課題/領域番号 |
24590749
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
上村 浩一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (50346590)
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研究分担者 |
釜野 桜子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00612574)
有澤 孝吉 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30203384)
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キーワード | 生活習慣病 / メタボリック症候群 / 血清肝酵素 / 動脈スティフネス |
研究概要 |
健診の基本検査項目により生活習慣病のスクリーニングを行うことができるかを検討するという本研究課題のひとつの目的に関して、中高年の一対象集団として、脳卒中、心筋梗塞、肝炎、肝硬変、がんの既往のない約2179人(男性1027人、女性1152人)の日本人一般集団を対象に、NCEP ATP IIIによるメタボリック症候群の定義を一部修正した基準を用いて、血清肝酵素である血清ALT、γGTP濃度とメタボリック症候群やその構成因子との関連を解析したところ、年齢、居住地、喫煙・飲酒習慣を調整しても、男女ともに、血清ALTおよびGGT濃度が上昇すると、たとえ正常範囲内での上昇であっても、メタボリック症候群およびそのほとんどの構成因子の有病のオッズ比が高くなり、傾向性も有意であった(血清GGT濃度と低HDLコレステロールとの関係以外)。さらなる検討で、血清ALTとγGTPはそれぞれ独立してメタボリック症候群と関連しており、また、メタボリック症候群有病に対する血清γGTP濃度と定期飲酒の有無との間に有意な交互作用があることを明らかにした。これらの成果は学会で発表し、海外学術雑誌に掲載された。さらにリクルートが完了した日本多施設共同コーホート研究・徳島地区の協力者(35~69歳)のうち、動脈スティフネス(血管壁の弾力性)の指標となる脈派伝播速度を測定した男性において、血清肝酵素値と脈派伝播速度の関係についても生活習慣等を含めて詳細に検討した。その成果を学会で発表予定であり、論文作成中で、海外学術雑誌に投稿予定である。本研究課題のもうひとつの目的である、出生状況と生活習慣病との関連を検討するための出生状況データについても、およそ160名に調査した。また、基本検査項目に加えて、インスリン値や炎症マーカーである高感度CRPも中高年集団で測定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中高年集団において、血清肝酵素値とメタボリック症候群やその構成因子との関連を、生活習慣を含めて詳細に検討し、その成果を学会で発表し海外学術雑誌に掲載することができた。さらに、異なる中高年集団(日本多施設共同コーホート研究・徳島地区の協力者)においてもリクルートが完了し、冷凍保存血液で、基本検査項目に加えてインスリン値や炎症マーカーである高感度CRPも測定でき、さらに、血管壁の弾力性の指標となる上腕-足首間の脈派伝播速度と血清肝酵素値との関係についても、約660人の男性において生活習慣を含めて詳細に検討でき、学会で発表予定であり、論文も海外学術雑誌に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
血清肝酵素値以外の健診の基本検査項目と生活習慣病(肥満、メタボリック症候群や糖尿病など)やその代替指標(脈派伝播速度、インスリン抵抗性、炎症マーカーである高感度CRP、等)との関連をさらに詳細に検討するとともに、出生状況と生活習慣病との関連を検討するための出生情報の調査を続ける。若年者では生活習慣病の有病が少ないこともあり、中高年集団(日本多施設共同コーホート研究・徳島地区の協力者約2500人)においても、郵送調査等により、出生状況(出生週数や出生時体重、妊娠時の母体合併症の有無など)をできる限り調査し、出生状況と生活習慣病との関連を、健診の基本検査項目や生活習慣を含めて詳細に検討したい。入手したデータを様々な角度から解析し、積極的に国内学会および国際学会で発表するとともに、海外学術雑誌へ論文を投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度までは主に、データ収集、および、健診の基本検査項目と生活習慣病との関係についての解析や論文作成が主な研究内容となり、冷凍保存している血液検体の測定を次年度としたことで、支出の大きな部分を占める予定であった血液検体測定にかかる諸費用を次年度に使用することとなった。また、平成25年度におこなう予定であった学会での成果発表も次年度に計画し、すでに海外学術雑誌に掲載された論文の掲載料等の支払い確定も次年度となるため、次年度使用額が生じた。 出生情報の調査のための費用(印刷代など)や、入手したデータの入力・管理のためのPCおよびデータ解析のためのソフトなどの購入費用、また、冷凍保存している血液検体の測定費用などに必要に応じて使用する。さらに、研究を発展させるために、積極的に情報収集や成果の発表をおこなうための国内学会や国際学会等の参加費・旅費や、海外学術雑誌に論文投稿する場合の英文校正料や論文投稿・掲載料、別冊請求費用に使用する。
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