研究課題
基盤研究(C)
日常身体活動と海洋療法を含む運動を曝露要因、血圧や脂質・糖代謝検査等を含む健診結果と医療費をアウトカムとして、縦断的に関連を明らかにした。対象者はあまみ島嶼地域で海洋療法施設があるW町一般住民で、2005年に行ったJ-MICC studyのベースライン調査に参加し、かつ2010年の2次調査にも参加した491名のうち、海洋療法利用状況や医療費の情報収集に同意が得られた453名である。海洋療法の利用情報は、各個人ごとの年間あたりの平均利用回数を収集して用いた。医療費情報は、2006年2007年の5月分と2010年2011年の5月分のレセプト情報を収集し、その平均値の差を対数化した上で利用した。日常身体活動と運動習慣における身体活動量はMETsを計算して用いた。健診結果は動脈硬化要因であるBMI、血圧、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド、空腹時血糖、さらに脈波測定で得られたCAVI値も動脈硬化の代理指標として利用した。解析は重回帰分析を用い、関連要因を調整した上で行った。研究計画に関しては、生命科学・遺伝子解析研究倫理審査委員会の承認を得て、調査と解析を行った。2005年から2010年にかけ5年間の値が増加した項目は収縮期血圧と海洋療法利用回数、低下した項目は中性脂肪、総コレステロールであった。日常身体活動量や運動習慣、海洋療法と収縮期血圧改善との関連では海洋療法のみが負の関連を認めた。また運動習慣と中性脂肪も負の関連を認めた。その他の項目や医療費の改善に関しては、有意な関連は認められなかった。海洋療法利用回数は収縮期血圧、習慣的運動量は中性脂肪の5年間の変化と負の関連を認めた。海洋療法は高血圧予防に効果がある可能性が示され、地域の特性を活用した健康増進の取組みの評価が得られたことは意義深い。
3: やや遅れている
一般住民を対象にした遺伝子多型による運動効果の影響に関する比較疫学研究を行うにあたって、必要な環境要因情報と健診結果は準備できていたが、海洋療法の利用情報と医療費の情報は現地で新たに収集した。特に医療費の情報は電算化される前の情報を紙カルテから転記し、集計する作業が必要となり、そのため、収集と集計に予想以上に時間を要した。
さらに対象者を増やした上で、遺伝子多型の解析に必要なDNAの抽出は完了している。平成25年度は遺伝子多型に関する解析を進める予定である。
運動と動脈硬化に関わる遺伝子多型を用いて解析を行うためのPCRに必要な試薬と器具を中心に研究費を使用する。さらに、島嶼地域を訪問し、特に死亡や罹患資料の収集を継続する。
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Endocr J
巻: 59 ページ: 589-599