研究課題
The arginine catabolic mobile element(ACME)は,ブドウ球菌ゲノムに見いだされた可動性エレメントで,ACME カセット内のアルギニン代謝遺伝子群によりアンモニアが生成され,皮膚の弱酸性条件下(pH4.2-5.9)での定着能を高めると考えられている。ACMEはメチシリン耐性を担う遺伝子 mecA を含むゲノムアイランド,Staphylococcal Cassette Chromosome mec (SCCmec) に近接して挿入され,ACME-SCCmec 複合体を形成している。近年,アジア,ヨーロッパ,オーストラリアにおいて USA300に代表される遺伝子型 ST8-MRSA-IVaとは異なる SCCmec 型の分離株でACME が多く検出されている。本研究では,我が国の主要な遺伝子型であるII 型 SCCmec を有する MRSA(MRSA-II)に着目し,臨床分離株における ACMEの分布と周辺遺伝子構造を明らかにした。さらに検出率と遺伝子構造の推移を解析し,ACMEの寄与について考察した。2008年から2011 年の間に北海道内の医療機関において分離された1,103株の MRSA-IIを対象とした。22 の ACME陽性菌体のACME-SCCmec 複合体の遺伝子構造を決定し,5つのバリアントに分類した。ACME にコードされている遺伝子のひとつ arcA 遺伝子の mRNA を定量し,各々のバリアントでの発現を確認した。ACME 保有率は,研究対象期間では有意な上昇傾向にあり,更に現在検討中である 2013-2014 年度に分離された菌体集団中でも保有率の上昇が見られた。以上のことから,ACMEが増殖や伝播に有意に働く可能性が示唆された。ACME- SCCmec 複合体の遺伝子長と分離時期には有意な負の相関がみられ,短いバリアントの方が選択的に有利である可能性が推測された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
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