①これまでの研究により、ハエが薬剤耐性菌を保有していることが明らかになった。しかし、ハエが保有する薬剤耐性菌・耐性遺伝子の変態に伴う変化については、明らかでない。そこで、ハエの産卵による次世代への薬剤耐性菌・耐性遺伝子の伝達、変態に伴う薬剤耐性菌・耐性遺伝子の変化を明らかにするために、以下の実験を行った。実験室内で飼育しているイエバエの成虫に薬剤耐性大腸菌を投与し、各ステージ(卵、ウジ、蛹、成虫)において継時的にサンプルを回収し、表面消毒後に、薬剤耐性大腸菌分離とDNA抽出による耐性遺伝子の検出を行った。薬剤耐性大腸菌を投与したハエの卵、ウジ、蛹、成虫の全てから発育、変態に伴い減少するものの薬剤耐性大腸菌及び耐性遺伝子が検出された。イエバエは、次世代まで薬剤耐性菌及び耐性遺伝子を保持することから、薬剤耐性菌及び耐性遺伝子の伝播・拡散を防止するには成虫だけでなくハエの発生を防ぐことが重要であることが示された。 ②日本各地で捕獲されたドブネズミ97検体及び北海道の無人島で捕獲されたドブネズミ94検体の糞便、計191検体から腸球菌の分離を行い、分離された腸球菌について薬剤感受性試験を行った。計132株の腸球菌が分離された。薬剤感受性試験の結果、耐性株の分離数は本土ドブネズミ由来株で無人島ドブネズミ由来株に比べて高い傾向にあった。無人島のドブネズミ由来腸球菌からはエリスロマイシン耐性株が分離されなかったが、本土ドブネズミ由来株からは3株のエリスロマイシン耐性株が分離され、これらはテトラサイクリンに対しても耐性を示した。以上の結果より、ドブネズミは薬剤耐性腸球菌を保有すること、人為的影響が薬剤耐性菌の選択圧になっていることが示唆された。
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