研究課題/領域番号 |
24590756
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
角田 正史 北里大学, 医学部, 准教授 (00271221)
|
研究分担者 |
大平 修二 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10118466)
渡辺 哲 東海大学, 医学部, 教授 (10129744)
遠藤 整 東海大学, 医学部, 助教 (10550551)
田代 朋子 青山学院大学, 理工学部, 教授 (50114541)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | トリブチルスズ / 神経毒性 / Tokai High Avoiderラット / 二世代曝露 / オープンフィールド / シドマン回避試験 / 経胎盤曝露 / 経母乳曝露 |
研究概要 |
記憶学習能力に秀でたTokai High Avoiderラットを用いて、トリブチルスズ(TBT)の2世代曝露によるF1世代への神経毒性について検討した。本年度は妊娠ラットに与える餌中のTBT濃度を50ppmに設定し、生まれてきたF1のラットを離乳までTBTに経胎盤・経母乳曝露した。離乳以降は通常餌で飼育を続けた。雄雌それぞれのF1ラットについて、TBTを含まない餌を与えた妊娠ラットから生まれたF1ラットと比較し、成長(体重)、5週令におけるシドマン電撃回避試験、10週令におけるオープンフィールド試験、prepulse inhibition (PPI) testを指標に神経毒性を評価した。更にラットを処理し、脳各部位の神経伝達物質、大脳、中脳におけるmRNA発現のオリゴヌクレオチドマイクロアレイによる解析も行った。母ラットへの餌中の濃度TBT50ppmにより経胎盤・経母乳曝露されたF1ラットは雄雌ともに対照群に比べて有意な体重の低下を示し、このレベルの経胎盤・経母乳曝露によっても成長抑制が起こることが示唆された。オープンフィールド試験においては、TBT曝露群において行動距離が部分的に有意に低下する傾向は示されたが、他の情動に関する指標(wall rearing, center rearing 回数など)は対照群と有意な差が得られず、先行研究のWistarラットの妊娠ラットに125ppmのTBTを与えた場合に比べて弱い結果であった。PPI testでも有意差は両群で観察されなかった。シドマン回避試験、神経伝達物質、脳内遺伝子発現について、更なる解析は必要であるが、TBT50ppm餌を用いた経胎盤・経母乳曝露においては、成長抑制が、神経毒性よりも顕著に現れることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はTokai High Avoiderラットを用いたトリブチルスズ(TBT)の神経毒性の評価について、経胎盤・経母乳曝露についての検討まで進行した。既に離乳期~発達期のTBT曝露による影響に関しては、検討を行っており、概ね順調に進展していると言える。餌中のTBT濃度を125ppmに設定して母ラットに与えるか、成長期に与えると有意な変化が神経毒性の指標(行動学試験)に現れるが、50ppmでは神経毒性に関しては少なくとも経胎盤・経母乳曝露については強くは現れず、閾値がこの辺りのレベルであることも明らかになりつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度の結果の解析、それに基づいた発表を進めながら、新たな実験として、トリブチルスズの経胎盤・経母乳曝露及び離乳期以後の発達期曝露を行い、連続曝露による影響を検討する。シドマン電撃回避試験を記憶学習能力の評価に用い、オープンフィールド、PPI testの行動試験も引き続いて行う。また成長抑制(体重減少)のメカニズムを探求する第一歩として、脂質代謝などについても検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
妊娠ラットに餌を介してトリブチルスズ(TBT)曝露を行い、生まれてきたF1ラットに経胎盤・経母乳曝露を行い、離乳以後はF1ラットの餌中にTBTを混ぜて与え、連続したTBT曝露による影響を検討する実験に対して研究費を使用する。シドマン電撃回避試験、行動学試験の評価、脳内神経伝達物質、遺伝子発現、脳内のトリブチルスズ濃度の検討を行う。また今までの研究をまとめ、論文として発表するために研究費を使用する。
|