研究課題
高い学習能力を持つTokai High Avoider(THA)ラットを用い、環境汚染物質であるトリブチルスズ(TBT)の2世代曝露による神経毒性を、特に記憶学習能力に焦点を当て研究した。初回妊娠したTHAラットにTBT chlorideを0または50ppm含む餌を摂取させ、出産を経てF1ラットが離乳するまで続けた。以上によりF1ラットは経胎盤・経母乳曝露を受けた。4週令で離乳後、F1ラットを引き続きTBTを0または50ppm含む餌を摂取させた。6週令時よりシドマン電撃回避試験を10日間行い、10週令時にオープンフィールド試験及びPrepulse inhibition (PPI) testで評価した。F1ラットの体重についてオスメス共にTBT曝露群で有意な低値を示した。シドマン電撃回避試験については、雄ではTBT曝露群の電撃回避率が前半のセッションについて6~10日で有意に低値を示し、後半のセッションでは10日にTBT群で有意な回避率の低値を示した。メスでは前半で1~9日でTBT曝露群の回避率が有意に低く、後半では1~7日及び10日で回避率がTBT曝露群で低かった。オープンフィールド試験については、オスでは試験開始後5~10分、10~15分で、TBT曝露群の行動距離の平均値が対照群より有意に低かった。TBT曝露群のwall rearing (WR)の平均値が対照群より有意に低かった。メスでは試験開始後5~10分、10~15分、20~25分、25分~30分で、TBT曝露群の行動距離が対照群より有意に低かった。WRの回数についてもTBT曝露群の平均値が対照群より有意に低かった。PPI testでは、オスメス共にTBT群と対照群に有意な差はなかった。TBTの経胎盤・経母乳、発達期の連続曝露により、成長抑制、記憶学習能力の障害、自発行動抑制が観察され、神経毒性が明らかになった。
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