精密機械メーカーに従事する不眠労働者(ホワイトカラー、常日勤者)を対象に睡眠保健指導プログラムを実施し、健康やパフォーマンスに対する効果を調べた。 まず、研究同意が得られた参加者に対してアテネ不眠尺度を用いて不眠症のスクリーニングを行った。その際、医療介入が必要なケース(睡眠呼吸障害や周期性四肢運動障害、睡眠行動障害が疑われる場合など)は除外した。その後、参加者を睡眠指導実施群と非実施群に無作為にわけ、睡眠指導実施群には、約60分間の睡眠衛生教育(睡眠のメカニズムや健康的な睡眠のための望ましい生活習慣など)と、睡眠日誌および簡易睡眠計を用いた3夜連続の睡眠測定を行った。そしててそれらの結果をもとに不眠のための認知行動療法(睡眠スケジュール法、リラクセーション法など) を用いた約30分の睡眠保健指導を行った。非指導群には介入群と同様の質問票調査と睡眠計を用いた測定のみ行った。睡眠衛生教育や睡眠保健指導は当該事業場の産業医が一人で実施した。解析は、ベースライン時と3ヶ月後の主観的な健康やパフォーマンスの変化を睡眠保健指導実施群と非実施群の2群間で比較した。 その結果、3ヶ月後の睡眠保健指導群の主観的なパフォーマンスは、非実施群に較べて有意に改善していた。また、3ヶ月後の主観的な健康指標においても、睡眠保健指導実施群は非実施群よりも有意に改善していた。睡眠保健指導の実施によって、睡眠状態や心身の健康状態が悪化する等の有害事象は発生しなかった。 研究終了後には、睡眠保健指導非実施群に対して睡眠衛生教育と簡易睡眠計を用いた睡眠保健指導を行った。
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