研究概要 |
新しい職業性肺疾患であるインジウム肺は、2010年12月に厚生労働省から「インジウム・スズ酸化物等の取扱い作業による健康障害防止に関する技術指針」および2013年1月に特定化学物質の第2類物質に指定され、間質性肺炎や続発性慢性閉塞性肺疾患の発症防止目的の職場健診が義務となった。本研究では、肺疾患の評価のための胸部CTにかわる代用検査として、簡易で、健康被害が少ない、効果的な影響指標の1つと考えられる肺拡散能検査(%DLco)を測定し、その有用性を検討することである。 平成24年度は、9工場(147名)に肺拡散能検査を含めた肺機能検査、血清インジウム濃度、間質性肺炎のマーカー(KL-6など)を測定することができた。 77名の中間解析の結果は、平均年齢は43歳、喫煙率は64%、平均血清インジウム濃度(In-S)は5.7 ng/ml、平均%DLco(DLco実測値/DLco予測値) は80.8%であった。対象者をIn-Sにより4群(低・中・高・超高濃度群:In-S<1, 1≦In-S<3, 3≦In-S<20, 20≦In-S)に分類すると、低・中・高・超高濃度群で、%DLcoの平均値は84.9%、80.1%、83.2%、59.7%と超高濃度群で有意に低下した。超高濃度群の平均値の95%信頼区間:44.7-74.8%。また、%DLcoは、log(KL-6)、log(SP-D)とも有意に高い相関を示した。インジウム曝露による影響指標の1つとして有用であることが示唆された。さらに対象数を増やすために調査を継続し、最終的には胸部CT(胸部高分解能CT)による間質性変化および気腫性変化のスコアと%DLcoの関係を検討する予定である。
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