研究実績の概要 |
本研究の目的は、炎症発がんに対する感受性を推測しうるバイオマーカーを末梢血DNA,RNAを用いて見出すことにある。Developmental Origins of Health and Disease (DOHaD)の概念を利用し、P53ヘテロ欠損マウスの母マウスを高葉酸飼料、コントロール飼料、低メチル化飼料にて飼育しメチル化の差異を仔マウスに生じさせた。その仔マウス8週令時に採血と同時に皮下にプラスチックプレートを埋め込み、慢性炎症を惹起させることによって皮下に線維肉腫を形成させたところ、コントロール飼料では、平均約24週で腫瘍形成を確認できたが、葉酸組成の違う群では、群間内に早期に腫瘍形成する仔体(高感受性群)と腫瘍形成が遅れる仔体(低感受性群)が出現した。これらの結果からは、一様に高、低メチル化されていると考えられる仔体が表現型として炎症発がん促進作用は認めず、むしろ高、低葉酸飼料を用いた場合、両者において発がん期間が延長した。このことは、特異的な領域にエピジェネテイクスの変化が生じた場合に炎症発がんに対して感受性の差異が生じる可能性が考えられたため、高感受性群と低感受性群の末梢血から抽出したDNAを用いて、次世代シーケンサーによりメチル化解析を行った。その結果、topoisomerase 3A (TOP3A)、Human immunodeficiency virus type I enhancer-binding protein 1 (HIVEP1))遺伝子のメチル化の差異が感受性を示すバイオマーカーになり得る可能性が示唆された。また、末梢血から抽出したRNAについて、マイクロアレイを用いて網羅的に遺伝子発現を検討した結果、Complement and coagulation cascades経路の差異が感受性を推測できるバイオマーカーになりうる可能性が示唆された
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