研究課題/領域番号 |
24590760
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
篠原 厚子 清泉女子大学, 付置研究所, 教授 (90157850)
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研究分担者 |
平田 岳史 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10251612)
松川 岳久 順天堂大学, 医学部, 助教 (60453586)
千葉 百子 順天堂大学, 医学部, その他 (80095819)
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キーワード | レアメタル / LA-ICPMS / セリウム(Ce) / ユーロピウム(Eu) / マウス肺 / 吸入曝露 / 化学形態 |
研究概要 |
レーザー試料導入質量分析法(LA-ICPMS)を用いた生体試料中レアメタルの局在と化学形態の検討を行うために、平成25年度はレアメタルとして希土類元素のユーロピウム(Eu)を選択し、酸化物微粒子(5または1μm径)を0.15 mg/m3の条件で7時間/日、5日間/週、4週間、ICR系マウス吸入曝露した。終了翌日に解剖したマウス肺をフェムトモルレーザーを用いてアブレーションした。ホルマリン固定しパラフィン包埋した肺を、1μ厚に薄切しシランコーティングスライドグラスに載せ、無染色の状態でEu、Zn、およびCuを測定した。平成24年度のCe曝露マウス肺と同様に、肺中にEuの粒子が検出されたが、粒子サイズはCeに比して、大小さまざまであり、吸入粒子が肺で一部溶解していることが推察された。肺以外の臓器への移行がEuの方がCeより顕著であるという結果と一致する。ソフトアブレーション法を用いて全試料をアブレートして得た信号から、測定薄片中の平均濃度はCe、Eu共に数μg/gオーダーと計算された。同条件で曝露したマウス肺の一部を酸で分解して測定したバルク濃度は、LA-ICPMSから計算した値より数~十倍高い値であった。LA-ICPMSの試料は病理観察用に、ホルマリンを気管から注入して肺を膨らませて固定したもので、固定肺は生の肺の約2倍の重量となっていたことを考慮しても、バルク濃度の方が明らかに高かった。パラフィン包埋作業による水分の変化や粒子が機械的に排除される可能性、または切片作成時に厚みと同じまたは数倍大きいサイズの曝露粒子が抜けおちる可能性などが考えられる。肺中に常在するCuとZn濃度に関しても、LA-ICP-MSから計算した平均濃度はバルク濃度より低いことから、LA-ICPMSは肺中の吸入元素の分布や動態の分析に有用なツールであるが、定量性に関してさらに検討する必要が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度に検討した装置の最適条件を用いて、肺におけるレアアースの局在と化学形態の測定をユーロピウム(Eu)曝露マウス肺にも適用した。Euについても、セリウム(Ce)の場合と同様に肺中の粒子が観察できること、Ceと異なり粒子サイズはさまざまで一部溶解していることが示唆され、イメージングにより臓器中での挙動の違いが観察できることがわかった。しかし、定量的な評価に使うためにはバルク濃度との比較が必要である。そのために試料作製の計画をたて、これから実施に移る予定である。25年度は粒子の吸入曝露だけでなく、経口摂取についても実験を行ったが、消化管吸収率は非常に低くほとんど臓器に取り込まれないことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、凍結切片試料を作製して、同一肺試料をLA-ICPMSとバルク分析ICPMSで測定し、定量的な評価を試みる。曝露元素がどのような生体成分と結びついて局在するかを検討するために常在する必須元素のイメージングを同時に行う。凍結臓器では、1μm厚の切片を作製することは困難と考えられるので、10μm厚程度の切片を作製し、定量的な評価をするための測定条件を設定する。これまで、可溶性希土類塩の静脈内投与で肺に高濃度に投与元素が分布すること、その際に肺中のCa濃度が増加することをを我々は見出した。静脈内投与したCeまたはEuの可溶性塩の肺における分布と化学形態、増加したCaの分布をLA-ICP-MSで測定することにより、投与希土類の化学形態とCaとの臓器内相互作用を検討する。投与化合物の化学形態による生体影響の違いを理解する助けとする。 研究費は分担者がそれぞれの検討を行うために分配する。代表者の篠原は物品費、実験補助者の謝金、および成果発表のための出張費等に使用する。実際の実験の多くの部分は、篠原が客員として籍をおく順天堂大学の施設で行い、共同研究者の松川、千葉とともに研究を進める。ICP-MS装置は順天堂大学共同施設で所有しているが、本研究で使用するLA-ICPMS装置は京都大学にあるため運転ガスとネブライザー等消耗品の費用を京都大学に分配し、本分析法の日本の第一人者である平田教授と協力して研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた学会出張費(交通、宿泊、参加費)が別研究費を使うことが可能となったり、招待講演となったために支出せずに済むケースがあった。投与実験と分析に予定より少し多くの時間がかかったため、購入予定であった消耗品の一部を平成26年度購入に変更した。 平成26年度に、学会出張費、消耗品費として使用して、研究を遂行する予定である。
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