研究実績の概要 |
研究対象施設は東京近郊の企業で、デスクワークを中心に研究開発などを担当する仕事をしている70名のうち、28名が認知行動療法(CBT)を受け、残りの42名がCBTを受けず支持的心理療法のみを受けた。CBTは一回30分でその回数は4回から45回であった。この回数は症状依存的であり、臨床的に職務に支障がなくなるまで続けられた。うつの重症度はCenter for epidemiologic studies depression scales (CES-D) により2年間の健康診断受診時に評価された。 研究期間中にCBTの介入があったグループはスコアの変化に有意差はなかった(平均(標準偏差)で14.2 (11.7)から14.0 (12.1)に変化, p = 0.90)。一方CBTの介入の無かったグループはCES-Dのスコアが有意に増加した (12.4 (4.3)から16.5 (6.5)に変化, p < 0.01)。介入群と非介入群のCES-Dスコアの変化量の比較では群間に有意差が認められ(p = 0.02)、非介入群では介入群に比較してスコアの上昇が認められた。また、20個あるCES-Dの症状の中で、集中力の低下、抑うつ症状、面倒くささの3つの変化量が非介入群で特に上昇していた(順に p = 0.05, 0.08, 0.09)。CBTによる介入とCES-Dスコアの上昇の間には有意な負の相関を認め、この結果は年齢・性別で調整後も有意であった(オッズ比 0.27, 95%信頼区間 0.10-0.79)。3年目は本研究結果を踏まえて6週間のCBTプログラムを改善し、RCTにて別の企業の労働者68人に実施したところ、CBT群において不安緊張の改善(d = 0.37)や、疲労の改善(d = 0.60)が認められた。
|