研究課題/領域番号 |
24590763
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
川田 智之 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00224791)
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研究分担者 |
大塚 俊昭 日本医科大学, 医学部, 准教授 (80339374)
稲垣 弘文 日本医科大学, 医学部, 講師 (50213111)
若山 葉子 日本医科大学, 医学部, 講師 (40104062)
勝又 聖夫 日本医科大学, 医学部, 助教 (80169482)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心理的安寧 / 生活習慣 / 睡眠時間 / インスリン / メタボリック症候群 / C反応タンパク / リスク評価 / 労働者 |
研究実績の概要 |
【はじめに】メタボリックシンドローム(MetS)発症の基礎は,インスリン抵抗性である.これは主要な身体的要因であるが,精神心理的要因の関与も考慮する必要がある.今回は比較的高齢の男性労働者を対象にして,MetSリスク評価を断面調査で行った. 【対象と方法】自動車製造業男性社員のうち,糖尿病,高血圧,脂質異常症,心脳血管疾患,高尿酸血症,肝疾患のいずれかで治療中の者,およびCRP10mg/L以上を除く51-60歳593人を対象とした.法定の健診項目以外に血清インスリン(EIA法)と高感度C反応タンパク質(CRP)を測定し,さらに問診票でメンタル状況をGeneral Health Questionaire 12項目版(GHQ12)で確認した.GHQ12の得点は各項目4選択枝に0-3点を配分して,加算合計したものを使用した. 【結果およびまとめ】対象者のMetS出現割合は20.9%(124/593)である.MetSの有無で,GHQ12得点を比較すると,MetS群15.5±5.6,非MetS群15.0±5.7で,平均値の有意差を認めなかった.一方,血清インスリン幾何平均(幾何標準偏差)は,MetS群8.9(1.8)mIU/L,非MetS群5.4(1.7)mIU/Lで,前者が有意に高値であり(p<0.001),血清CRP幾何平均(幾何標準偏差)は,MetS群0.70(2.5)mg/L,非MetS群0.38(2.8)mg/Lで,前者が有意に高値であった(p<0.001).さらに,年齢,インスリン15mIU/L以上,CRP1mg/L以上,GHQ12得点,「現在喫煙しない」,「毎日飲酒はしない」,「定期運動あり」,「睡眠時間6時間未満」を説明変数とするMetS予測のロジスティック回帰分析を行った結果,統計的に有意な変数のオッズ比(95%信頼区間)は,インスリン5.6(2.6-11.9),CRP2.2(1.4-3.6)であり,年齢,睡眠時間,GHQ12得点,および3つの生活習慣とは有意な関連性は認めなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象の職場で,担当の安全衛生課の御協力により,メタボリックシンドローム(MetS)との関連要因分析が,心理的安寧の指標であるGHQ12得点を含めて、詳細に検討された.今年度は50歳代男性を対象にした解析であるが,MetSとの有意の関連性を示す指標は,血清インスリンとCRPのみであり,40歳代と同様,GHQ12得点はMetSとの関連性を認めなかった.さらに,生活習慣として,「現在喫煙しない」,「毎日飲酒はしない」,「定期運動あり」,「睡眠時間6時間未満」はいずれもMetSとの有意の関連性を認めなかった. なお,生理指標を用いた解析として,フクダ電子バセラVS-1500AEを用いたCardio-Ankle Vascular index (CAVI)と頸動脈エコーによる動脈硬化指標との関連性を,人間ドック受診男性について追加検討し,一部を学術論文として公表した.この集団からは,今回,GHQ12得点を入手できなかったので,心理的安寧指標を考慮した解析は今後の課題としたい. .
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今後の研究の推進方策 |
最終の平成27年度は,今年度までの結果を束ねて,全年齢層の断面調査を行い、併せて,一部短期追跡によるMetS発症に寄与する要因分析を行う予定である.特に,GHQ12については,MetSとの関連性が明瞭ではないため,GHQ12の得点計算方法についてさらに検証し,MetSとの関連性を再度検討したいと考えている.なお,生活習慣要因とMetSとの関連性については,得られた血漿フィブリノーゲン値を加えた要因分析を実施予定である.
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