本年度は、カーボンナノチューブのヒト胸膜中皮細胞(MeT-5A)暴露により見出された変化が、それ自体によるものか、混入が指摘される鉄などの遷移金属によるものであるのかを明確にするため、遷移金属の暴露による、細胞内脂質過酸化、抗酸化酵素の失活およびDNA損傷修復酵素の発現変動について評価、解析を行った。遷移金属の混入を想定して、混入量が最大で5%となるように、鉄、コバルト、ニッケル塩を添加して、MeT-5A細胞に処理した結果、脂質過酸化が若干促進される傾向が観られたのみで、その他の細胞内の成分変化およびカーボンナノチューブ暴露で見られる現象は、いずれも認められなかった。更に、DNAの酸化部位を解析するために8-OHdGを検出し、その修飾箇所の解析をLC-MS/MSを用いて試みたが、その特定には至らなかった。 一方、今年度はナノマテリアル暴露の指標となる酸化ストレスマーカーの探索を試み、大気汚染物質の暴露指標として注目される、ヒト血球中のペルオキシレドキシン2(Prx2)の酸化状態について解析するため、新規の分離検出法を考案した。
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