研究課題/領域番号 |
24590768
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
市原 正智 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (00314013)
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研究分担者 |
村雲 芳樹 北里大学, 医学部, 教授 (40324438)
祖父江 沙矢加 中部大学, 生命健康科学部, 助教 (50513347)
岩本 隆司 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (60223426)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水素 / 紫外線 / 線虫 |
研究概要 |
本研究の目的は紫外線障害に対する分子状水素(以下水素)を用いた新規予防法を提案することにある。平成24年度は線虫寿命を指標に、水素が生体を紫外線障害から保護することの検討を行った。初めに水素が線虫寿命に与える影響を検討するために、空気下のコントロール環境とこれに水素を4%添加した水素添加環境で、N2株を用いて寿命に対する水素の影響を検討した。その結果水素は線虫寿命をわずかに延長する可能性が示唆されたが有意差は観察されなかった。次に線虫が成虫になった生後4日目に紫外線照射を行い照射後の寿命を検討したところ、水素投与群で有意に生存期間の延長を見た。さらに線虫卵を用いて紫外線耐性を検討した場合も生存率の増加が観察された。病態を検討するために生殖腺でのアポトーシスを示す細胞の数で検討したが、紫外線照射に伴うアポトーシス細胞の増加が水素投与で抑制された。またlong PCRの増幅率によりDNA損傷に与える影響を判定したが、水素添加によりDNA損傷が有意に減少することが観察された。次に分子状水素の作用がどのシグナル伝達経路、ストレス対応経路に影響を与えて効果を発揮するかを、長寿関連遺伝子、ストレス反応遺伝子、DNA修復遺伝子などのRNAi発現ベクターを投与して検討した。その結果分子状水素は広範な作用点を有することが示唆され現在さらに検討を加えている。一方ヒトのケラチノサイト由来HaCaT細胞を用いて紫外線照射が生存率に与える影響を検討した。生存率の有意な延長があるとの既報告例があり、我々も各種条件を変えて検討を行ったが有意な生存率の増加は再現できなかった。また細胞内シグナル伝達系の評価でも水素の影響は観察できなかった。現在他の細胞を用いて検討を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 線虫生存率を指標とした紫外線暴露に対する水素の生体保護効果についての検討 水素が紫外線から線虫を保護し生存期間を有意に延長することを示す事が出来た。しかし長寿関連遺伝子、ストレス反応遺伝子、DNA修復遺伝子などの経路の分子に対するRNAiによるノックダウンでは、多系統の分子のノックダウンによる水素の寿命延長効果の消失が観察された。このため合理的解釈を行えるように結果をさらに集積している。 2. 線虫および培養細胞を用いた水素添加に伴う紫外線からの生体保護効果の細胞・分子レベルでの検討 過去の他施設の報告で水素が紫外線照射から細胞を保護したとされる細胞株を選んで検討を加えたが、他施設の報告の再現性が得られず検討予定が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は研究計画に従い、1. 線虫の生存率を指標とした個体レベルでの検討、2. 線虫および培養細胞を用いた水素添加に伴う紫外線からの生体保護効果の細胞・分子レベルでの検討、を継続するとともに、3. ヘアレスマウスをもちいた紫外線照射皮膚発癌モデルにおける分子状水素の皮膚発癌抑制効果の検討、を進める。培養細胞では初代培養細胞などを使う検討を進める以外は計画の大きな変更は無い。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費に値引き等があり当初予定額より1割程度少ない実支出額となった。25年度に新たに予定している初代培養細胞の培養関連費用、DNA microarray購入費用等で支出が計画以上の支出が予定されるため繰り越し分をこれにあてる。
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