研究課題
本研究の目的は紫外線障害に対する分子状水素を用いた新規予防法を提案することにある。平成26年度からの検討に引き続き、ヘアレスマウスをもちいた紫外線照射皮膚発癌モデルにおける分子状水素の皮膚発癌抑制効果の検討を行った。平成26年度の検討ではUV誘発性皮膚癌の発症に有意な差が観察されなかったが、照射線量が過剰であったことが一つの原因として考えられた。そこで平成26年度の検討と比較して60%程度のUVB照射量に設定し1回270 mJ/cm2の積算照射量で、7週齢目から20週間にわたり週3回の頻度で行った。H₂マウスへの水素投与は、UVB照射開始4週間前(3週齢)から行い、UVB照射期間中の27週齢まで20週間にわたり投与した。その結果水素非投与マウスに比べて、水素投与マウスでは腫瘍形成時期に遅延がみられた。しかし、腫瘍の増殖速度や、個体ごとに形成される腫瘍数には大差はなかった。またUVB照射によって形成された腫瘍の組織型も両群間で差を認めなかった。一方このUVB照射時期の皮膚の炎症を免疫組織染色で検討したところT細胞に対する抗CD3抗体による免疫染色では、非投与群と水素投与群で明らかな差は見られなかったが、好中球に対する抗Gr-1抗体による免疫染色では非投与群に比べて水素投与群で炎症細胞の減少傾向が見られた。水素はUVBにより皮膚に惹起される炎症を軽減し、持続する炎症刺激に伴う皮膚表皮の反応性変化を減弱することが示された。こうした水素の作用は、紫外線照射により誘発される皮膚癌発症の初期過程を修飾し、皮膚癌発症を遅延させる効果が期待された。
すべて 2016 2015
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