研究課題
中国西北部の乾燥地域を起源とするアジアンダスト(黄砂)の生態系への影響は社会的関心を多く集めている。環境省及び気象庁はそれぞれ各自の観測体制を整え,常時観測を行っている。さらに,黄砂の飛来情報をリアルタイム及び飛来予測を国民に伝えやすくするために,総合リンクサイトが設けられている。黄砂の日本に飛来する時期がしばしば大陸で発生する化学物質の越境輸送と同じ時期であるため,それらの化学物質は黄砂に吸着され,または黄砂の構成成分に触媒的に働かれ,新たな有害化学物質を生成する恐れが懸念される。本研究は発がん性/変異原性を有する多環芳香族炭化水素(PAH)が大気中における変質にアジアンダスト(黄砂)の触媒作用を明らかにすることを目的としている。今年は昨年度に続き,中国のタクラマカン砂漠,トングリ砂漠,ホルチン砂地及び黄土高原の4地点で採集したバックグラウンド黄砂を用いてPAHの曝露実験を行った。曝露反応条件は昨年度と同様に設定した。すなわち,反応性ガス(二酸化硫黄/二酸化窒素/オゾン)が共存と非共存下,明(蛍光灯)と暗(遮光)の条件のもと,3環から5環までの計14種のPAHを用いて曝露実験を行った。その結果,いずれのPAHの黄砂への物理吸着が認められたが,同一条件における吸着容量に差がなかった。曝露後に,ジクロロメタンを用いて抽出し,分析したところ,昨年度と同様に,ヒドロキシ体,ニトロ体及びキノン体に由来するピークが検出された。どのPAHの曝露反応に未知生成物のピークが得られ,同定するための分取操作も始まっている。
2: おおむね順調に進展している
計画通りの曝露実験を終え,未知反応生成物質の同定と毒性評価についても順調に進んでいる。
曝露生成未知物質の単離同定と毒性評価を行う予定である。
当初予定した曝露チャンバーのメンテナンス費用は予想より少なかった。また,反応及び反応生成物の同定に使用した標準試薬は,一部既存のものを使用したためであった。未知生成物質を同定するための濃縮・分取関連カラムとその他の消耗品に充てると計画している。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (3件)
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