研究課題
中国西北部の乾燥地域を起源とするアジアンダスト(黄砂)の生態系への影響は社会的関心を多く集めている。黄砂の日本に飛来する時期がしばしば大陸で発生する化学物質の越境輸送と同じ時期であるため,それらの化学物質は黄砂に吸着され,または黄砂の構成成分に触媒的に働かれ,新たな有害化学物質を生成する恐れが懸念される。本研究は発がん性/変異原性を有する多環芳香族炭化水素(PAH)が大気中における変質にアジアンダストの触媒作用を明らかにすることを目的としている。今年は昨年度に続き,中国のタクラマカン砂漠,トングリ砂漠,ホルチン砂地及び黄土高原の4地点で採集したバックグラウンド黄砂を用いてPAHの曝露実験を行い,さらに,異なる場所で採集したバックグラウンド黄砂の構成成分を誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて分析した。計15種の元素を分析した。スカンジウム(いずれも未検出)を除いて比較した結果,バックグラウンド黄砂の採取場所によって構成成分が異なることはわかった。また,構成成分とPAHの吸着容量とを比較したところ,特に有意な相関関係が得られなかった。よって,黄砂へのPAHの吸着は,黄砂の物性,すなわち粒径分布及び比表面積だけに依存することを明らかにした。しかし,異なる黄砂上に二次的に生成するPAHの酸化体の種類及び反応速度について,構成成分との関連は本研究で行っていなかった。今後の展開として,それらを明らかにしたい次第である。
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