研究課題/領域番号 |
24590770
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
西村 泰光 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (90360271)
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研究分担者 |
武井 直子 川崎医科大学, 医学部, 助教 (00509276)
大槻 剛巳 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40160551)
藤本 亘 川崎医科大学, 医学部, 教授 (50165429)
林 宏明 川崎医科大学, 医学部, 助教 (60388965)
李 順姫 川崎医科大学, 医学部, 助教 (70414026)
松崎 秀紀 川崎医科大学, 医学部, 助教 (80335463)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 石綿 / 遊離ケイ酸 / 悪性中皮腫 / 珪肺症 / 全身性強皮症 / 免疫機能 / 癌疾患 / 自己免疫疾患 |
研究概要 |
粉塵曝露関連疾患患者から血液検体の提供を受け、免疫機能の評価・解析を行った。当初の計画では、本年度は胸膜プラーク陽性者(PL)と悪性中皮腫患者(MM)の免疫機能解析を行う予定であったが、中皮腫患者の血液検体の集まりが良くかったこともあり、珪肺症患者(SIL)および全身性強皮症患者(SSc)の免疫機能解析を積極的に行った。血液から血しょうを分離した後、調整した末梢血単核球(PBMC)からフローサイトメーター(FCM)と蛍光標識抗体を用いてTヘルパー(Th)細胞、Tキラー(Tc)細胞、NK細胞、単球系細胞を分離し、刺激前およびPMA・ionomycin刺激後の細胞を凍結保存した。またPBMCの細胞膜上免疫関連分子発現レベルについてFCMを用いて解析を行った。その結果、すでに分かっているMM患者のNK細胞上のNKp46発現低下およびTh細胞上のCXCR3発現低下が確認されたことに加え、MMではTc細胞やNK細胞上でのCXCR3発現低下やNK細胞上でのFasL発現低下の傾向を示した。他方、SILおよびSScではTh細胞やTc細胞上のCXCR3発現増加を示し、Th細胞上ではIL-18発現増加が見られ、Tc細胞上ではCD25, FasL, CD69発現増加が見られた。これらの結果は、石綿曝露関連疾患においては免疫機能が抑制されている傾向がある一方、遊離ケイ酸(シリカ)曝露関連疾患では免疫機能が過剰に活性化されている傾向があること示している。このことは、石綿曝露が癌疾患に関わり、シリカ曝露が自己免疫疾患と関わることの背景因子である可能性が示唆される。今後、次年度以降において、同様の解析を更に進めると共に、凍結資料を用いた免疫関連疾患遺伝子mRNA量の解析および血漿中サイトカイン濃度の解析等を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であった胸膜プラーク陽性者および悪性中皮腫患者の免疫機能解析が患者検体数の不足により遅れているが、他方で珪肺症患者および全身性強皮症患者の解析が予定以上に進んでいる。また、フローサイトメーターを用いた各種免疫担当細胞の細胞膜上免疫関連分子の発現量解析およびmRNA量解析に向けた細胞試料の凍結、またNK細胞の細胞傷害性測定、についても予定どおり行えている。遅れている中皮腫患者の患者検体についても、研究協力者と連絡をとり、平成25年度に集めることを予定している。またmRNA量解析に向けても、リアルタイムPCRに用いるプライマーの設計も既に完了している。以上のことから、本研究課題は研究計画に従って堅調に進んでおり、また既に得ている解析結果から、石綿曝露影響とシリカ曝露影響の違いを示す内容も明らかになりつつあり、研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降には遅れている中皮腫患者の免疫機能解析および細胞試料の凍結保存を進める。また、リアルタイムPCRを用いた凍結細胞試料中の免疫関連遺伝子のmRNA量の解析、およびluminex, cytometric bead array, ELISA等を用いた凍結血しょう試料中のサイトカイン・ケモカイン濃度解析を行う。解析が完了次第、統計学的解析による中皮腫および強皮症患者の免疫学的特徴の抽出を行う。さらに、重回帰分析などによる抽出指標の各疾患への関わりの評価を行う。以上のような解析を、適宜方法の修正・改善を行いながら完了させ、石綿曝露とシリカ曝露の免疫学的影響の詳細なデータを獲得し、両曝露が関わる悪性中皮腫および全身性強皮症の予防・診断に寄与するように万全を期する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度にリアルタイムPCRを多数行う予定であり、必要とされるプライマーなどの試薬の購入に充てることを予定している。
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