研究課題/領域番号 |
24590772
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
大藪 貴子 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (20320369)
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研究分担者 |
明星 敏彦 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00209959)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ粒子の生体影響 / 表面官能基 / 肺胞マクロファージ / 貪食 |
研究概要 |
ナノサイズ粒子は、ミクロンサイズ粒子では持ち得ない電気的性質や光学的性質を利用して工業製品や医療への応用が期待されている。ナノ粒子の生体に及ぼす影響は、粒子の表面積に依存することが多数報告されており、このことは即ち、有害性は表面性状に依存することを示唆している。本研究では、表面官能基の異なる3種のナノ粒子の生体影響を評価するために、本年度は粒径25nmの表面官能基の異なる3種(Plain、-NH2、-COOH)の蛍光ポリスチレンラテックス粒子を肺胞マクロファージとin vitroで培養し、表面性状(官能基)が貪食量に及ぼす影響をフローサイトメーターで定量的に評価した。 まず、予備実験として、使用する細胞、培養液の種類、培養液中の細胞と粒子の割合、培養時間などの影響を検討した。その結果、培養液中の細胞と粒子の割合は、細胞1個あたりの粒子数は、2時間の培養において1×10^8個で充分な貪食が認められ、感度の高い測定ができることが認められた。培養液については、粒子の表面に培養液の構成成分が結合することにより、実際の肺内環境を再現できないことも考えられるため、培養液として、RPMI培地に加え、PBS、実際に正常ラットの肺から回収したBALFなどについて検討した。細胞についても、ラット肺胞マクロファージ株であるNR8383に加え、実際に正常ラットから採取した肺胞マクロファージを実験に用いて検討した。 その結果、これらのほぼすべての試験において、表面にCOOH基を持った蛍光ポリスチレンラテックスナノ粒子が、ラット肺胞マクロファージに最も高い割合で取り込まれることが認められた。しかし、本年度用いた3種の蛍光ポリスチレンラテックス粒子は、異なる蛍光強度を持ち、結果はその補正を行う必要があった。来年度以降の定量評価は、粒子成分の化学分析を行う予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、粒子の表面官能基が生体影響におよぼす影響を評価するために、初年度は表面官能基の異なる3種の蛍光ポリスチレンラテックスナノ粒子を肺胞マクロファージとin vitroで培養し、貪食の割合を定量的に評価することを目標としていた。これについては、いろいろな条件を検討し、表面にCOOH 基を持つ粒子の取り込みが多いことが認められ、動物実験に進む準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に行ったラット肺胞マクロファージによる表面官能基の異なる3種の蛍光ポリスチレンラテックスナノ粒子貪食量を定量的に評価する試験管内試験において、COOH基を持った粒子がラット肺胞マクロファージに最も多量に取り込まれることが認められた。しかし、試験管内試験では、実際の肺内環境を完全には再現できないため、培養液の種類や培養時間に取り込み量が依存する等の避けられない問題もあり、また、蛍光ポリスチレンラテックス粒子についても、同じ蛍光強度の3種の粒子を入手できない等の問題点もあり、本年度の結果は、あくまで定性的な結果と考えている。 平成25年度は、定量評価できる表面官能基の異なるナノ粒子をラットの気管内に注入して、粒子の動態や、生体影響を評価することを目標に研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、数種類の表面官能基の異なるナノサイズ粒子をラットの気管内に投与し、気管支肺胞洗浄液中の肺胞マクロファージの粒子取り込みや肺の間質や血液中および他の臓器に存在する投与粒子を定量することにより、投与したナノサイズ粒子の表面性状が肺胞マクロファージの貪食や体内動態、有害性にどのように影響するのかを定量的に検討する。研究費は、ラット購入費、試験粒子の購入費、解剖後の粒子測定にかかわる試薬および実験器具類の購入費、病理組織切片作成費などに充てる。
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