研究課題/領域番号 |
24590773
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道立衛生研究所 |
研究代表者 |
小島 弘幸 北海道立衛生研究所, 理化学部, 主幹 (10414286)
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研究分担者 |
武内 伸治 北海道立衛生研究所, 理化学部, 主査(有害化学物質) (20414287)
室本 竜太 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30455597)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境化学物質 / AhR / IL17 / Th17 / ROR / 自己免疫疾患 / ダイオキシン / レポーターアッセイ |
研究概要 |
内分泌系・免疫系・神経系は、ホルモンやサイトカインを介して密接に連携していることが知られている。近年、インターロイキン(IL)-17を特異的に産生するヘルパーT細胞群(Th17)による免疫異常症への関与が注目されており、この細胞分化を制御するマスター遺伝子として、レチノイド関連オーファン受容体(ROR)の他に、ダイオキシン受容体(AhR)が報告されている。本研究では、in vitroレポーターアッセイ法を用いて環境化学物質のAhR 活性の有無を調べ、マウスリンパ腫EL4細胞でのIL-17遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。さらに、マウス脾臓細胞を用いたAhRアゴニストによるIL-17産生の影響も調べた。 農薬、難燃剤、可塑剤、植物由来化学物質などの環境化学物質をDR-EcoScreen細胞によるレポーターアッセイで試験したところ、いくつかの農薬やイソフラボン類にAhRアゴニスト作用を認めた。EL4及びAhR-knockdown EL4細胞を用いて、これらのAhRアゴニストによるIL-17遺伝子発現作用を調べたところ、EL-4細胞では刺激剤で誘導されたIL-17遺伝子発現を増強する作用を認めたが、AhR-knockdown細胞ではその増強作用は減弱した。さらに、脾細胞でのIL-17産生はこれらのAhRアゴニストにより増強することが認められた。以上の結果から、ある種の環境化学物質はAhRを介してIL-17遺伝子発現を亢進させることが推察されるとともに、EL4細胞を用いた遺伝子発現系は、化学物質によるIL-17産生作用を評価するアッセイ法として有用であることが示唆された。 現在、イソフラボン類によるin vivo影響を調べるため、C57BL/6マウスを用いた自己免疫疾患モデルマウスの投与実験を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表を行うなどの成果を挙げており、これらのデータについて現在投稿準備中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
AhRを介したIL-17産生増強のメカニズムを解明する一環として、IL-17遺伝子発現のマスター遺伝子である核内受容体RORにダイオキシン受容体であるAhRがどのように相互作用するかについて、環境化学物質存在下でのROR-AhR結合の有無を明らかにする。環境化学物質として、大気環境中に多く存在する多環芳香族炭化水素(PAH)の影響を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. AhR活性を有する環境化学物質のin vitro IL-17産生に及ぼす影響(武内、小島):EL4細胞にAhR活性を有する化学物質を添加培養し、IL-17A遺伝子発現及びIL-17A蛋白の産生を調べる。すなわち、細胞分化の指標として、サイトカイン遺伝子のRT-PCRによる発現解析、培養上清中IL-17濃度のELISAによる測定、フローサイトメトリーを用いた手法によりTh17細胞分化を確認する。なお、EL4/shAhr細胞を用いたIL-17産生に及ぼす影響も同様に検討する。 2. 他の転写因子(STAT3, LXR, ROR)との相互作用に関する研究(小島、室本):化学物質によるSTAT3活性化について、RT-PCR解析による遺伝子発現とウエスタンブロット法によるSTAT3リン酸化で調べる(Muromoto et al., 2009)。また、化学物質によるLXRalpha/beta活性及びRORalpha/gammat活性について、各レポーターアッセイ法で測定する(Kojima et al., 2012)。 3. 自己免疫疾患モデルマウスを用いたAhRリガンドのin vivoでの影響(室本、松田):AhRアゴニスト活性を有する環境化学物質をEAEモデルマウスに(腹腔内または経口)投与する。病態の進行をスコア化し、化学物質投与による重傷度をコントロール(無投与)群と比較検討する。
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