研究課題
近年、インターロイキン(IL)-17を特異的に産生するヘルパーT細胞群(Th17)による免疫異常症への関与が注目されており、この細胞分化を制御するマスター遺伝子として、レチノイド関連オーファン受容体(ROR)の他に、ダイオキシン受容体(AhR)が報告されている。環境化学物質の中にはAhRに結合して生体へ悪影響を及ぼす物質が数多く報告されており、これらの物質によるIL-17を介した免疫異常症への関与が懸念される。本研究2年目は、マウスリンパ腫EL4細胞及びAhR-knockdown EL4細胞を用いて、AhRアゴニスト作用を有するイソフラボン類の一つ、バイオカニンA(BA)によるIL-17 mRNA発現増強作用の機構について検討した。1)EL4細胞とAhR-knockdown EL4細胞のIL-17 mRNA発現量をRT-PCR法により比較したところ、AhR-knockdown EL4細胞においてEL4細胞よりもIL-17 mRNAの約100倍以上の発現増大を認めた。また、EL-4細胞では刺激剤で誘導されたIL-17遺伝子発現をBAが増強する作用を示したが、AhR-knockdown細胞ではその増強作用は認められなかった。さらに、BAはEL4細胞でのIL-22 mRNA発現を増強することからも、BAはEL4細胞においてAhRアゴニストとして機能することが明らかとなった。2)シグナル伝達転写活性化因子(STAT3)の細胞内リン酸化(活性化)はRORの産生を誘導しIL-17産生を増強することから、BAによるSTAT3活性化に及ぼす影響を調べたところ、BAはSTAT3活性化を増強することが明らかとなった。さらに、STAT3活性化を引き起こすc-SRCキナーゼ活性を増強することから、この作用はAhRを介したc-SRCキナーゼ活性化によるカスケードの関与が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
Dioxin 2013の国際学会や第20回日本免疫毒性学会(年会賞受賞)で発表を行うなどの成果を挙げており、これらのデータについて現在投稿準備中であるため。
AhRを介したIL-17産生増強のメカニズムを解明する一環として、IL-17遺伝子発現のマスター遺伝子である核内受容体ROR、ダイオキシン受容体AhR、さらに、シグナル伝達転写活性化因子STAT3を含めたAhR-STAT3-ROR相互作用について環境化学物質存在下での影響を明らかにする。環境化学物質として、大気環境中に多く存在する多環芳香族炭化水素(PAH)の影響を検証する。
次年度の物品購入費に若干のゆとりを持たせたかったため。物品費として使用する。
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