研究実績の概要 |
近年、IL-17を特異的に産生するヘルパーT細胞群(Th17)が報告され、この細胞分化を制御する因子としてレチノイド関連オーファン受容体(ROR)やダイオキシン受容体(AhR)が報告されている。昨年度までの本研究結果から、イソフラボン類はROR/co-activator形成を安定化することでIL-17A遺伝子発現を増強することが明らかとなった(Kojima et al. 2015, Toxicology, 329, 32-39)。今年度は、イソフラボン類の一つであるバイオカニンA(BA)に焦点を絞り、AhRを介したIL-17A産生の機序について検討した。DR-EcoScreen細胞株を用いたレポーターアッセイの結果、BAはAhRアゴニスト作用を有することを見出した。次に、マウスリンパ腫EL4細胞及びAhRの発現を恒常的に抑制したAhR-knockdown EL4細胞にBAをそれぞれ添加培養し、刺激剤(PMA/ionomycin)処理によるIL-17A遺伝子発現量をRT-PCR法にて比較した。BAはEL4細胞におけるIL-17A遺伝子発現を亢進したが、AhR-knockdown EL4細胞ではIL-17A発現亢進は認められなかった。このことから、BAはAhRを介してIL-17A発現を増強することが示唆された。さらに、このIL-17A発現増強に伴い転写活性化因子STAT3の活性化(リン酸化)作用を認めたことから、STAT3のリン酸化を誘導するチロシンキナーゼSCRの活性化を調べた。その結果、BAはSRCを活性化することを認めた。SRCは細胞内においてAhRと複合体形成しており、AhRリガンドの存在下ではAhRから解離してSTAT3を活性化することが報告されている。さらに最近、活性化されたSTAT3はRORプロモーター領域に結合し、RORの発現を増強させることが報告されている。以上の結果から、イソフラボン類によるIL-17A発現増強作用にはROR/co-activator形成の安定化以外にも、AhRを介したSTAT3活性化シグナルの関与が推察された。
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