研究課題/領域番号 |
24590775
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
石井 伸昌 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 主任研究員 (50392212)
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研究分担者 |
田上 恵子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 主任研究員 (10236375)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 浄水発生土 / 放射性セシウム / 園芸 / 移行係数 |
研究概要 |
浄水場で生じる浄水発生土は、グランド用土や園芸用土として有効利用されてきた。しかし、東京電力福島第一原子力発電所の事故により浄水発生土が放射性セシウムで汚染され有効利用できず、浄水場での保管量が増大し続けている。浄水発生土の有効利用は保管量の軽減および資源のリサイクルの点から重要であるが、有効利用による追加被ばくも考慮しなければならない。特に浄水発生土を園芸用土として有効利用した場合、野菜を栽培する可能性があり、浄水発生土から野菜への放射性セシウムの移行を評価することは重要である。H24年度はコマツナによるCs-137の経根吸収について検討した。 赤玉土、黒土、腐葉土からなる土壌(0S土壌)、0S土壌4.5 Lに対して浄水発生土を0.5 L混合した土壌(0.5S土壌)、および0S土壌3.5 Lに浄水発生土1.5 L混合した土壌(1.5S土壌)を作成し、コマツナを栽培した。栽培過程において各土壌で栽培したコマツナの草丈に差は無く、また収穫時の生重量は0S土壌よりも浄水発生土を含む土壌で栽培したコマツナで重くなった。これらの結果から、浄水発生土はコマツナの成長を抑制しなかったことが分かった。0S土壌、0.5S土壌、1.5S土壌で栽培したコマツナの収穫時における乾燥重量当たりのCs-137濃度は、それぞれ1.89 Bq/kg、153 Bq/kg、400 Bq/kgであった。これらを生重量当たりに換算しCs-134の濃度との和から放射性セシウムの濃度を求めたが、いずれも新基準値である100 Bq/kgを超えることはなかった。また、浄水発生土を含む土壌からコマツナの乾燥重量当たりのCs-137移行係数は、混合した浄水発生土の容積比にかかわらず0.1であり、生重量当たりの移行係数は0.007であった。これらの値は、我が国の農地で栽培した葉菜類のCs-137移行係数の範囲内であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浄水場で水処理をする際に発生する浄水発生土は,園芸用土やセメント原料として有効利用されてきた。しかし,福島第一原子力発電所の事故により,東北や関東の浄水発生土は放射性セシウムで汚染されため,浄水場での保管量が増大し続けている。汚染された浄水発生土の一部はこれまで通り園芸用土として利用可能か?本研究は,汚染された発生浄水土を含む園芸土で野菜を栽培し,野菜への放射性セシウムの移行を評価すること,そして収穫した野菜を食すことによる内部被ばく線量を評価することを目的とする。 H24年度は放射性セシウムで汚染された浄水発生土でコマツナを栽培し、浄水発生土からコマツナへの放射性セシウムの経根吸収および土壌-植物移行係数を求めた。目標達成のため、計画通り研究が進んでおり、まとまった成果も得られている。平成24年度に得られた成果は論文としてRadioisotopes誌に投稿し、受理された。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、浄水発生土に含まれる放射性セシウムの経根吸収を抑制する園芸用資材について検討する。そのために浄水発生土を含む様々な土壌を用いてコマツナ、チンゲンサイなどを栽培し、土壌の種類と放射性セシウムの移行係数の関係について求める。また、昨年度の成果を国内および国内で学会発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
栽培のための土壌資材の購入、浄水発生土を利用して栽培した野菜の栄養価を評価するための試薬の購入、実験補助、および成果を発表するための旅費に使用する。
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