研究課題/領域番号 |
24590775
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
石井 伸昌 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 主任研究員 (50392212)
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研究分担者 |
田上 恵子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 主任研究員 (10236375)
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キーワード | 浄水発生土 / 放射性セシウム / 園芸 / 移行係数 |
研究概要 |
浄水場で生じる浄水発生土は、グランド用土や園芸用土として有効利用されてきた。しかし、東京電力福島第一原子力発電所の事故により浄水発生土が放射性セシウムで汚染され有効利用できず、浄水場での保管量が増大し続けている。浄水発生土の有効利用は保管量の軽減および資源のリサイクルの点から重要であるが、有効利用による追加被ばくも考慮しなければならない。特に浄水発生土を園芸用土として有効利用した場合、野菜を栽培する可能性があり、浄水発生土から野菜への放射性セシウムの移行を評価することは重要である。そこで,平成24年度はコマツナによるCs-137の経根吸収について検討し,平成25年度は浄水発生土に含まれる放射性セシウムの経根吸収を抑制する園芸用資材について検討した。 赤玉土、黒土、腐葉土、牛糞堆肥、化成肥料、および浄水発生土からなる土壌を準備し、これに土壌改良資材としてバーミキュライトあるいはパーライトを混合し4種類の栽培用土壌を作成した。これらの土壌でコマツナを栽培し,収穫後,コマツナ及び土壌の放射性セシウムを、Ge半導体検出器で分析した。 バーミキュライトを混合した土壌では放射性セシウムのコマツナへの移行が明らかに抑制された。また、粒子の大きさが移行の抑制に影響することも分かった。小さな粒子は単位重量当たりの表面積(比表面積)が大きく、より多くの放射性セシウムがバーミキュライトに収着され、その結果コマツナに取り込まれる放射性セシウムが少なくなったと考えられる。一方、最も濃度が高くなったのはパーライトを混合した土壌で栽培したコマツナで、土壌-農作物移行係数も最大であった。今後、パーライト混合土壌で放射性セシウム濃度が高くなった原因について検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浄水場で水処理をする際に発生する浄水発生土は,園芸用土やセメント原料として有効利用されてきた。しかし,福島第一原子力発電所の事故により,東北や関東の浄水発生土は放射性セシウムで汚染されため,浄水場での保管量が増大し続けている。汚染された浄水発生土の一部はこれまで通り園芸用土として利用可能か?本研究は,汚染された発生浄水土を含む園芸土で野菜を栽培し,野菜への放射性セシウムの移行を評価すること,そして収穫した野菜を食すことによる内部被ばく線量を評価することを目的とする。 平成25年度は浄水発生土に含まれる放射性セシウムの経根吸収を抑制する園芸用資材について検討し,バーミキュライトが浄水発生土からコマツナへの放射性セシウムの移行を抑制すること,抑制にはバーミキュライトの粒子サイズも影響すること,さらにパーライトを含む土壌では放射性セシウムの移行が促進される可能性があることを明らかにした。これらの成果の一部は平成26年度に開催され学会で発表する予定である。このように一定の成果が得られており,平成25年度の目標は達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
バーミキュライトによる土壌から農作物への放射性セシウムの移行抑制効果はこれまでにも知られていたが,浄水発生土に対しても同様の抑制効果が働くことが分かった。一方,放射性セシウムの農作物への移行に対するパーライトの効果についてはこれまでほとんど知見がない。平成25年度の研究において,パーライトが放射性セシウムの農作物への移行を促進する可能性が示唆されたため,この効果を確認するとともに,その原因についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の残金。 消耗品の購入に充てる。
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