研究概要 |
2001-2005年に愛知県がんセンター疫学研究プログラムに参加した乳がん症例697例と年齢を適合させた非がん対照者1394例を対象とした症例対照研究を行った。 これまでにGWASで見出されている乳がんリスクに関連する23遺伝子多型と乳がんリスクとの関連を、条件付きロジスティックモデル(per allele, dominant, recessive model)から算出されるオッズ比と95%信頼区間(CI)、p値で評価した。3つのモデルのいずれかでp<0.15を示し独立性の高い7つの遺伝子多型(rs10931936 rs4973768 rs2046210 rs1251615 rs2981579 rs3818198 rs3803662)を選定した。これらを組み合せて5つの遺伝的リスクグループ(リスクアレル数0-3,4-5,6-7,8-9,10以上)を作成し、乳がんリスク予測モデルを構築した。最低リスクグループに対するその他のリスクグループのオッズ比は、それぞれ1.33 (95%CI, 1.00-1.80), 1.71 (1.26-.30), 3.01 (1.97-4.58), 8.69 (2.75-27.5)であった。 次に、リスクモデルの正確性をROC解析で評価した。遺伝的リスク要因のみ、環境要因のみ、遺伝的+環境要因によるリスクモデルのAUCはそれぞれ、0.5933、0.6652、0.6933と、遺伝的リスク要因のみでのリスク予測は不十分で、環境要因と組み合せて乳がんリスクを評価する必要性があることが分かった。また、同リスクモデルの一般集団における寄与度は、33.3%であった。 以上より、7つの遺伝子多型を組み合せたリスクモデルは、一般人口における寄与度も高く、既知の環境要因と組み合せることにより乳がんリスクを正確に予測できる事が分かった。
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