研究課題/領域番号 |
24590777
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池野 多美子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (80569715)
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研究分担者 |
室橋 春光 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 特任教授 (00182147)
佐々木 成子 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30448831)
白石 秀明 北海道大学, 大学病院, 助教 (80374411)
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キーワード | 発達障害 / ADHD / 学童期 / 喫煙曝露 / 環境遺伝交互作用 |
研究概要 |
本研究は、環境と子どもの健康影響を解明する出生コーホート(登録数20,929人)に参加している8歳児を対象に、注意欠如多動性障害(ADHD)発症の環境リスク要因を明らかにする。環境要因の1つである喫煙は、胎児期曝露を妊娠初期調査票と母体血漿コチニン値で、学童期の喫煙曝露を7歳時の両親喫煙状況と児尿中コチニン値により評価する。ADHDは8歳時調査票でConners3とADHD-RSを、8歳時追加調査票で自閉症スぺクトラムとの鑑別用にASQを用いた。コーホート内症例対照研究用に抽出された児には、対面調査でWISC-IVとCBCL、母親の育児ストレス調査を行う。本年度は、次の事が明らかになった。 (1)8歳時調査票1,905名、8歳時追加調査票1,572名を回収し、データクリーニングした1,273名について解析を行った。医師によりADHD診断を受けた児は24名(1.9%)、発達障害診断を受けた児は36名(2.8%;ADHDと重複あり)であった。Conners3による各症状得点は不注意得点平均5.7点/最高30点、多動衝動性得点平均4.5点/最高42点、総合指標得点1.6点/最高20点であった。男女別では、不注意得点、多動衝動性得点で男児が有意に高かった(p<0.001)。妊娠中の母体血漿コチニン値は9.5ng/ml(N=1081)であった。母体血漿コチニン値を評価指標にして、Conners3の各指標得点との関連を検討した結果、年収や養育環境得点で調整すると関連は認められなかった。 (2)Conners3日本語版の指標のT得点65≧をADHD疑い群として同意を得られた73名に対し、対面で児のWISC-IV検査を実施した。ADHD疑い群は12名(男児11名)、対照群は61名(男児33名)であった。全般的知能は、ADHD疑い群が平均98(SD13.1)、対照群は平均104(SD13.2)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
8歳時調査票は平成25年度1,192名回収(回収率平均55%)、追加調査票864名回収(回収率平均85%)しており、発送と回収状況は順調である。平成26年度には新たに8歳となる児を対象に、8歳調査票を1,590名、8歳追加調査票を826名に発送予定である。胎児期喫煙曝露の評価は、すでに母体血漿中コチニン測定が16,980名分終了し、7歳時尿中コチニン測定は平成25年度に448件測定し、累計1,057件の測定が完了した。調査票から得られる環境要因と喫煙曝露データを連結することにより、十分なサンプル数でADHDへの環境リスク評価が可能となる。特に追加調査票により、ADHDと自閉症スペクトルに含まれる発達障害との鑑別、発達障害の種類別の環境リスク要因の検討を行うことができると予想している。コーホート内症例対照研究の対面調査は、平成25年度37名の調査を担当した調査員4名を引き続き確保している。遺伝的要因については、遺伝子多型ならびにメチル化定量の分析により、出生体重への環境遺伝交互作用を解析しており、ADHD発症に関連する遺伝子についても、コーホート内症例対照研究で解析する対象者を抽出し次第、遺伝子解析を進められる体制が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
1)全員を対象とした調査票調査 平成26年度には8歳時調査票を1,590名へ、8歳時追加調査票を836名に発送する予定である。回収見込み予想は、8歳調査票890名(回収率56%)、8歳時追加調査票719名(回収率86%)である。7歳時尿中コチニン測定は平成25年度までに採取した1,057件と26年度に採取する尿のコチニン値を8歳データセットに連結する。 2)コーホート内症例対照研究 ①Conners3日本語版の不注意、多動衝動性、総合指標の各T得点65以上をADHD疑い群として、性・年齢をマッチングした対照群とともに対面調査を行う。平成26年度は、小学校夏休み30~40名、冬休み20名、春休み30~40名、合計80~100名の対面調査を実施し、WISC-IVと養育者への調査票(CBCL、養育者ストレスなど)の情報を収集する。平成24年度からの合計150名以上(症例・対照合計)を目標にする。②対面調査対象者から母体血と臍帯血のペアを抽出し、ADHD関連単一塩基多型(DRD4,DRD5を中心に)分析、DNAメチル化異常の分析をパイロシーケンサーで測定し解析する。 [連携研究者] 岸玲子(北海道大学・環境健康科学研究教育センター・特任教授)、荒木敦子(北海道大学・環境健康科学研究教育センター・准教授)、安住薫(北海道大学・環境健康科学研究教育センター・客員研究員)
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に実施予定であった対面調査の一部(約30名分)を次年度に延期したため、謝金(謝礼:図書カード)とそれに伴う費用(発送物等)の支出が繰り越しになった。 平成26年度に前年度実施予定であった約30名分も含めた対面調査の実施により、発生する謝金等として使用する。
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