研究実績の概要 |
本研究は環境と子どもの健康影響を解明する出生コーホート(登録数20,929人)に参加している8歳児を対象に、注意欠如多動性障害(ADHD)発症の環境リスク要因を明らかにすることを目的とした。環境要因のうち喫煙は、胎児期曝露を妊娠初期調査票と母体血漿コチニン値で、学童期曝露を両親喫煙状況と児尿中コチニン値により評価した。ADHDは調査票でConners3とADHD-RSを用いた。さらにコホート内症例対照研究用に抽出された児に遺伝子多型解析とWISC-Ⅳなど対面調査を行った。 1) 8歳時調査票2,545名について解析を行った。ADHDの診断を受けた児は36名(1.4%)、発達障害の診断を受けた児は64名(2.5%)であった。Conners3による症状得点は「不注意」平均6.6点(最高30点)、「多動衝動」平均5.8点(最高42点)、「総合指標」1.5点(最高20点)であった。男女別では男児が高かった(p<0.000)。妊娠後期母体血漿コチニン値は平均8.8ng/ml(N=2,201)であった。 2) ADHD-RSの得点からADHD傾向を分類し、混合型(N=6)、多動型(N=26)、不注意型(N=64)、分類不能型(N=42)、計138名をADHD疑い群とした。妊娠中喫煙および児の受動喫煙曝露を独立変数とし、ロジスティック回帰分析でADHD疑いへの影響を検討した。年収や性別、葉酸値などで調整した結果,妊娠中の喫煙による有意な影響が示された(AOR=2.2; 95%Cl, 1.002-4.631)が、児の受動喫煙との関連はなかった。 3) 2)と同一のADHD疑い症例群138名について、EP1システム(Fludigm社製)を用いSNPs解析を行った。DNA抽出は母体血と臍帯血を用いた。解析は神経伝達関連遺伝子であるDRD4、DAT1、HTR1B、COMT、SNAP25および脳由来神経栄養因子(BDNF)について行った。 4) Conners3Pの「不注意」「多動衝動」「総合指標」のいずれかの指標でT得点65以上をADHD症状疑い群として対面調査対象者を抽出した。調査同意が得られた177名に対しWISC-Ⅳ検査などを実施した。ADHD症状疑い群は69名、対照群は110名であった。
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