研究課題
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)は典型的なストレス関連疾患であり、便通異常に関連した腹痛・腹部不快感が慢性・再発性に持続する症候群である。身体症状のみならず、抑うつや不安など気分の変化を伴うことや生活の質(Quality of Life: QOL)を低下させることが知られている。また、IBSは思春期に見られる代表的な心身症のひとつであるが、成人に比べて疫学的特徴や病態に関する調査は少なく、発症に関与する因子についても不明な点が多い。本研究では、宮城県内で大規模疫学研究を施行し、平成16年データと比較して思春期のIBS有症状者の変化を把握する。沿岸部と内陸部との比較により、東日本大震災でのトラウマ的体験がIBSの発症率を増加させ、その影響は数年後までも及ぶという仮説を検証する。加えて失感情症傾向・ストレスなどの因子が及ぼす影響、有症状者が患者に変化する契機、QOLの変化も追跡して思春期IBSの特徴を捉える。本邦で思春期IBSに関する疫学的データはほとんどなく、かつ大震災前に同様の方法で施行された調査データと比較し震災の影響を検討できるのは本研究のみである。《研究実績》a. 宮城県内の中学生に対する疫学調査実施準備:宮城県内の中学3年生を対象とした疫学調査を計画していたが、教育現場は現在でも震災の影響で混乱した状況が続いており、平成16年と同様の方法でのデータ収集は非常に困難であることが判明した。そのためデータの収集方法を再検討する必要性が生じたため、海外の疫学調査専門家と協議し、既存データと比較して目的とする結果を得るための研究計画を検討した。b. 情報収集:アメリカ消化器病学会、日本心身医学会等に参加し、国内外のIBSに関する疫学的動向について情報を収集するとともに、データの新たな解析方法についてのディスカッションを行った。
3: やや遅れている
宮城県教育委員会および県医師会と質問紙の配布時期や方法について調整を行った結果、教育現場は現在でも震災の影響で混乱した状況が続いており、平成16年と同様の方法でのデータ収集は非常に困難であることが判明した。そのためデータの収集方法を再検討する必要性が生じ、結果を出すための代替案を検討した。現場での負担を軽減すべく、質問紙に関しても内容の見直しを行った。
現場の負担を考え、結果を出すために必要最小限な内容の質問紙を作成する。代替のデータ収集法を確立し、現場との調整が済み次第、速やかにアンケート調査を実施する。調査に協力した生徒に対し、希望があれば窓口で相談を受け、診療可能な施設の紹介などして対応する。
調査施行の遅れにより、質問紙郵送費、データ入力費用等を次年度に繰り越した。
調査実施に伴い、繰り越した研究費は使用する予定である。
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Annals of Gastroenterology
巻: 28 ページ: 158-159
Journal of Gastroenterology
巻: 50 ページ: 817-818
0.1007/s00535-015-1074-z