研究課題/領域番号 |
24590780
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 しづ子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60225274)
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研究分担者 |
笹野 高嗣 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (10125560)
庄司 憲明 東北大学, 大学病院, 講師 (70250800)
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キーワード | 口腔乾燥感 / 東日本大震災 / 味覚異常感 / 食欲不振 / 体調不良 / 10品目食品摂取 |
研究概要 |
当該年度は、被災地の関連施設に研究実施協力依頼を行ったが、各施設の協力体制が整わず次年度(平成26年)協力の確約を受けた。 従って、当該年度の研究は東北大学病院歯科受診した高齢者患者のうち「口腔乾燥」の訴えを含む高齢者患者を対象とした調査を行った。具体的には「口腔乾燥に感じる自覚症状の有無:味覚異常感の有無、食べ物を飲み込みにくい、食欲の有無、体調不良の有無」「食事摂取内容の調査(10品目法)」「全身疾患と服用薬の有無と詳細(罹患ならびに服薬開始時期、全身疾患名と薬名と投薬量、全身疾患の経過など)」「総唾液分泌量測定:自然唾液ならびにガムテスト」「口腔乾燥の併発症状の検査:味覚検査、口腔真菌培養検査、口腔内精査」その結果の統計分析によって、今回は、口腔乾燥に併発する味覚異常感と摂取食品群について関連があることが判明した。すなわち、1)口腔乾燥の訴えを含む高齢者患者120名のうち約半数に味覚異常感がみられた。2)味覚異常感の中で最も多い訴えは「味を弱く感じる」で、次いで「味を強く感じる」「常に味を感じる」の順であった。また、複数の異常感を同時に訴える高齢者が多く存在した。3)味覚異常感のある高齢者では、毎日摂取する食品が、肉類・牛乳類・卵類・魚類・大豆類・海藻類・イモ類・緑黄色野菜・果物・油脂類の10品目全ての摂取が低下しており、食品摂取の多様性が失われていた。4)味覚異常感のある高齢者では、体調低下ならびに食低下が、正常者に比べて有意に多くみられた。以上の結果から、口腔乾燥感のある高齢者には味覚異常感が高頻度にみられ、さらに味覚異常感を伴うと食欲や体調にまで影響が及ぶことが判明した。 今後患者数を増やし、また被災地関連施設での疫学調査によって、震災と口腔乾燥および全身状態との関連をさらに明らかにする計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
被災地関連施設の調査協力が得られず、被災地での疫学調査が滞ったため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、関連施設の担当者に、調査協力の説明を行う確約をとりつけた。被災地関連施設にいおいて、調査協力依頼書とプレゼン、資料を用いて説明を行う。担当者からは、ほぼ内諾を得ているので、関連施設上層部の許可を得た後、ただちに疫学調査を行う予定である。また、仙台市内で大震災の被害が少なかった場所の老人大学に、同様の疫学調査を実施する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
疫学調査を行う予定であった被災地関連施設から、当該年度の疫学調査の協力は無理で、次年度協力できると通告されたため、被災地での疫学調査ができず、予定していた額を使用することができず、次年度へ繰り越すことになった。 次年度は、被災地関連施設から疫学調査の協力が得られている。さらに次年度は、仙台市内で震災による影響が少なかった地域における同年齢の健常者の疫学調査を追加行う予定を立てた。これらの聞き取り調査ならびに口腔内検査をアシストして行う研究協力者も複数決定しており、積極的な疫学調査施行に予算額を使用する計画である。
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