研究課題
マンモグラフィによる乳がん検診は死亡率減少に関するエビデンスが確立され、特に50歳以上の年代においては検診の利益である死亡率減少効果が確実なこと、検診による不利益が許容範囲であることから定期的な受診が推奨されている。その一方で49歳以下の年代では乳腺濃度が高いこと(Dense Breast)に起因する不利益が大きいために、総合的な利益は十分とは言えないことが問題視されている。我々は40代女性の検診ではがん発見の感度が71.4%にどどまることを論文として報告しており、検診の中間期がんを検証することで乳がん検診の精度向上を目的とした調査、研究を継続している。前述の論文では地域がん登録殿照合によって検診の中間期がんを同定し解析を行ったが、中間期がんと確定された症例であっても、治療した医療機関への逆照会は、がん登録の性格上禁止されており、把握した症例に対して当初の目的であった病理組織学的調査は断念せざるを得なかった。次善の策として現在我々が事務局として運営している「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J-START)」から報告される中間期がんを対象とした研究を行っている。J-STARTの主要評価項目に関する論文は2016年1月にThe Lancetに掲載された。がん発見数・発見率は介入群で184件(0.50%)、コントロール群で117件(0.33%)であり、有意差をもって介入群で高かった(p=0.0003)。中間期乳がんは介入群で18例、コントロール群で35例の報告があり、有意差をもって介入群で低かった(P=0.034)。乳がん発見感度は介入群91.1%(95%CI 87.2-95.0)、コントロール群77.0%(95%CI 70.3-83.7)となり、介入群で有意に高かった(p=0.004)。介入群で発見された乳がんはStage Iの浸潤がんが多いことが報告されており、中間期がんに関しても臨床進行度、画像所見、病理学的所見、生物学的特性等に関するデータ収集、解析を行っている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
The Lancet
巻: 387 ページ: 341-348
10.1016/S0140-6736(15)00774-6
日本乳癌検診学会誌
巻: 不明 ページ: 不明