研究課題/領域番号 |
24590782
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
堀口 兵剛 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90254002)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタロチオネイン / カドミウム / 遺伝子多型 / 米 / 農家 |
研究概要 |
メタロチオネイン(MT)はカドミウム(Cd)の曝露により肝臓や腎臓で産生される低分子蛋白質であり、Cdの毒性や種々のストレスに対して防御的な働きをしている。従って、MTの遺伝子型の違いにより個人間での産生量が異なり、Cdの毒性に対する感受性にも差が存在する可能性がある。 平成22年から23年にかけて秋田県内の鉱山の影響で土壌中Cd濃度の高い農村地域で米作を営み、比較的高いCd濃度の自家産米を摂取してきた40歳以上の農家753人(男性336人、女性417人)を対象に健康診断を実施したが、その際に採取し、-80℃で冷凍保存してあった末梢血からDNAを抽出してMT遺伝子多型を調べた。解析対象とした遺伝子多型は、MTの産生との関連性が示唆されているMT2A遺伝子rs28366003のSNPであり(Kita K, et al., Hum Genet, 2006)、PCR-CTPP(Polymerase chain reaction with confronting two-pair primers)という解析方法を用いた。 その結果、男性ではAA型が285人、AG型が50人、GG型が1人、女性ではAA型が355人、AG型が60人、GG型が2人という遺伝子型の分布が確認できた。次に、男性、女性それぞれでAA型、AG/GG型に分け、尿中MT濃度の幾何平均値を比較したところ、男性ではAA型87.8 ug/g cr.、AG/GG型90.1 ug/g cr.であり(p=0.78)、女性ではAA型107.7 ug/g cr.、AG/GG型116.8 ug/g cr.であった(p=0.29)。また、年齢、血中・尿中Cd濃度においても遺伝子型の間で有意の差は認められなかった。従って、当該MT遺伝子多型はMT産生に対して大きな影響はない可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はサイクリングプローブ法(TaKaRa)で解析する予定であったが、DNA配列の関係でプローブ作成ができなかったため、PCR-CTPPに変更し、なんとか当初の予定していた上記のMT2A遺伝子rs28366003のSNPについて解析することができた。また、ストックしてある血液サンプルを用いることができたので、当初の予定よりも多くの対象者数で解析することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
NCBIや JSNPなどのデータベースから他のMTのSNPをいくつか選択し、上記の753人のDNAサンプルについて更に解析を行う。また、今回解析したサンプルに加え、長期保存してある他の地域のカドミウム腎症患者のDNAサンプル及びイタイイタイ病患者のDNAサンプルを用いて、同様にMT遺伝子多型の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は過去の健康診受診者から新たに対象者を選択・リクルートして血液サンプル等を採取する予定であったが、ストックしてある過去の受診者の血液サンプルを解析に用いることができたため、解析サンプル数を大幅に増やすことができたでなく、経費も節約することができた。この研究費を用いて、翌年度以降は多数のDNAサンプルについて遺伝子解析を行う予定である。
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