研究課題
最終年度においては、海外で開催された統計手法に関する講習で取得した技術をもとに、我が国における高血圧と糖尿病、脂質異常症に対する薬物療法の効果を、人口レベルで数量化した。循環器疾患基礎調査と国民栄養調査、国民健康・栄養調査の個票データを用いて、高血圧は1986年以降、糖尿病と脂質異常症は2003年以降について分析した。横断面調査の観察データから治療効果を推定するための統計手法を応用し、30歳以上の患者集団における治療群と非治療群を共変量により関連付け、各患者の治療効果を推定した。推定された治療効果に基づき、患者集団において薬物療法により達成可能な最大の効果のうち、実際に達成された効果の割合と定義される有効カバレージ(effective coverage)を算出した。その結果、それぞれの生活習慣病について、薬物療法の治療効果と有効カバレージは改善傾向にあり、男女間の差はなかったが、30~64歳よりも65歳以上のほうが高い水準で推移していることが示された。また、都道府県間で高血圧の血圧管理率と有効カバレージに著明な差が見られた。このように、我が国における高血圧と糖尿病、脂質異常症に対する薬物療法の効果は改善傾向にあるが、年齢間や地域間の差は依然著明であった。以上の研究成果をもとに、雑誌投稿論文を作成するとともに、第25回日本疫学会学術総会で発表し、最優秀演題賞を受賞した。なお、研究協力者として、西信雄氏(独立行政法人国立健康・栄養研究所国際産学連携センター長)からの助言を得た。今後、超高齢化社会における非感染性疾患による疾病負担を予防するための保健医療政策の一つとして、これらの重要な危険因子に対する薬物療法の治療率の改善および患者と臨床におけるコンプライアンスの向上への対策をより一層強化し、患者集団に対する薬物療法の効果の最大化と格差の解消を図ることが挙げられる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
PLoS One
巻: 10 ページ: e0118749
10.1371/journal.pone.0118749
The Lancet
巻: 384 ページ: 766-81
10.1016/S0140-6736(14)60460-8