研究課題
本研究課題は、インフルエンザウイルスに対する免疫記憶機構の解明を目的としている。これまで、2009年9月、2010年3月、2011年11月、2014年4月に同一集団を対象として、ボランティアから採血を行い、pdmH1N1亜型のインフルエンザウイルスに対する抗体価を調べてきた。その結果、インフルエンザ発症の有無や、ワクチン接種の有無に関係なく、常に高い抗体価を保持しているグループと、ワクチンを複数回接種しているにもかかわらず、全く抗体価が上がらないグループが存在することが明らかとなった。2015年4月、同集団のボランティア57人(年齢分布:23歳-60歳、平均年齢:40.6歳)から採血を実施した。pdmH1N1ウイルスに対する抗体価を調べた結果、高い抗体価を保持するグループのボランティアは引き続き高い抗体価を維持しており、抗体価の上がらないグループのボランティアは、ワクチンを接種していても抗体価の上昇は認められなかった。pdmH1N1に対する抗体価が上がらない原因の一つとして、2009年のパンデミック発生前に流行していた季節性H1N1ウイルスに対する抗体が影響している可能性が考えられたため、2009年に分離された季節性H1N1ウイルス、A/Kawasaki/UTK-4/09に対する抗体価を調べたところ、pdmH1N1ウイルスに対する抗体価で分けられたグループとは全く相関がみられなかった。これらの結果から、pdmH1N1ウイルスに対する抗体価の上昇の有無には、季節性H1N1ウイルスに対する抗体価の上昇は影響していないことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
これまでに解析してきた抗体価の結果から、pdmH1N1亜型のインフルエンザウイルスに対する抗体価に個人差があること、またその個人差には季節性H1N1亜型のインフルエンザウイルスに対する抗体価は相関していないことが明らかとなったため。
今後は、pdmH1N1ウイルスに対する抗体価の上昇に差を与える因子の解析を進めていく。
次年度は、本研究課題の最終年度にあたり、これまでに収集した検体の解析と集積データの分析に費用を要するため、翌年度分の助成金と合わせて使用させていただきたい。
次年度使用額を消耗品費として使用させていただきたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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