日本、英国、フィンランドの公務員を対象として、社会経済的要因による健康格差について、心理社会的ストレス、ワークライフバランス、健康行動の観点から国際比較研究を行った。その結果、①健康行動(喫煙、飲酒、運動、食事)や肥満については、日本では職階による格差が横断的にほとんど認められなく、また、縦断的にみても拡大傾向はなかった。②心理社会的ストレス(裁量度と要求度)や精神的身体的健康度については、日本、英国、フィンランドにおいて、程度の差こそあれ職階が低いほど健康度が低いという格差が横断的に認められた。精神的身体的健康度の格差は、英国とフィンランドでは縦断的にみて拡大したのに対して、日本では縦断的にみて格差の拡大傾向を認めなかった。また、男性と比較して女性の方に健康度が低い人が多いという男女格差が、3か国で認められた。心理社会的ストレスの男女格差については、フィンランド、英国、日本の順に男女格差が大きくなった。心理社会的ストレスの格差を統計学的に調整すると、日本の健康度の男女格差の縮小幅が最も大きかった。また、心理社会的ストレスのうち3か国比較では、要求度は日本で高く、また、勤務時間も長い傾向にあった。ワークライフバランスについては、日本の女性において最も悪く、フィンランドの男女において良好であった。以上から、日本の社会経済的要因による健康格差は、心理社会的ストレスや健康度については英国やフィンランドと類似していたが、健康行動の格差については英国とフィンランドと相違して格差が小さいという特徴があった。日本における健康格差の縮小のためには、心理社会的ストレスにより焦点を置いた対策が求められることが示唆された。
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