研究実績の概要 |
福岡県久山町の2007-2008年の循環器健診を受診した40-79歳の住民2,702名に75g経口糖負荷試験を行い、HbA1c、グリコアルブミン(GA)、1,5-アンヒドログルシトール(AG)を測定し、頚動脈エコー検査で頚動脈内膜中膜複合体厚(IMT)を計測した。最大IMT>1mmをIMT肥厚ありと定義した。糖代謝異常(GI)群、正常耐糖能(NGT)群ともに、最大IMTの平均値はHbA1c、GA、空腹時血糖値(FPG)、負荷後2時間血糖値(2hPG)レベルの上昇に伴い有意に増加したが、1,5-AGでは明らかな関連を認めなかった。さらに、他の心血管病危険因子で調整すると、GI群ではHbA1c、GA、FPGと最大IMT平均値との間に有意な正の関係が残ったが(いずれも傾向性p<0.05)、NGT群ではいずれの血糖関連指標においてもその関係が弱まった。同様に、各血糖関連指標レベル別にみたIMT肥厚を有するオッズ比(多変量調整)は、GI群ではHbA1c、GA、FPGレベルの上昇とともに有意に上昇した(いずれも傾向性p<0.001)が、NGT群では明らかな関連は認めなかった。次に、GI群において、既知の心血管病危険因子に血糖関連指標を加えることでIMT肥厚に対する判別力が改善するか否かを検討した。その結果、既知の危険因子のみで作成されたリスク関数に比べ、これにHbA1cあるいはGAを加えたリスク関数ではROC曲線下面積は有意に増加したが(いずれもp<0.05)、1,5-AG、FPG、2hPGではROC曲線下面積の有意な増大は認めなかった。以上より、地域住民では、GI群においてHbA1cおよびGAは1,5-AG、FPG、2hPGに比べ、頚動脈硬化に対する判別力が高いことが示唆された。この研究成果は、平成26年の第57回日本糖尿病学会年次学術集会で発表するとともに現在欧文誌に投稿中である。
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