研究実績の概要 |
小児のインフルエンザ桿菌b型(Hib)感染症に対する、ポリサッカライド結合ワクチン(Hib-CV)の有効性は欧米先進国で確立された。しかし、アジア人においてはインフルエンザ桿菌感染症に占めるHibの割合が低いことが知られており、特に東南アジア低中所得国におけるHib-CVの効果は十分に明らかでない。一方近年、Hib-CV導入後に、ワクチンが無効なインフルエンザ桿菌による感染症が増加する現象(血清型置換)が報告されている。本研究では、ベトナム中部ニャチャン市において実施されている小児呼吸器感染症サーベイランスを活用することで、ベトナム人小児におけるHib-CVの効果を解明する。また実際の接触行動パターンに基づくシミュレーションモデルを用いて、今後のベトナムにおけるHib感染症の罹患率の推移を推定し、血清型置換がもたらすインパクトを検証する。 平成25年度は、ベトナムで2010年6月に国家ワクチン計画に導入されたDTP-HepB-Hib combination vaccineの効果を判定するための基礎データとして、ベトナムにおける小児肺炎の発生率を推定し(J Pediatr. 2013 Jul;163(1 Suppl):S38-43.)、インフルエンザウイルスが小児肺炎の発生に及ぼす影響を明らかにした(Influenza Other Respir Viruses, 2014 Jul;8(4):389-396)。平成26年度は、これらのデータをもとに時系列解析を行うことで、2010年のワクチン導入により小児肺炎が39%減少したことを明らかにした(Vaccine. 2014 Dec 5;32(51):6963-6970; Trop Med Health. 2014 Jun;42(2 Suppl):47-58.)。平成27年度は、シミュレーションモデルを用いてベトナムにおけるHib性小児肺炎の発生数の推移を推定し、それが減少傾向にあることを示した。
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