がんリスク視覚化プロジェクトの最終年度として、地理的加重一般化線形モデルと、交互作用項を含むパラメトリックモデルを用いたリスク曲面の推定を行い、その結果に関する比較検討を行った。日本の主要な部位に関して試した結果、リスクの視覚化に関しては細やかな特徴を精確に表現できる地理的加重一般化線形モデルが適していた。一方で、解析の主目的がリスクの視覚化でなく、統計学的仮説検定や将来予測といった2次的な場合にはパラメトリックモデルを用いることにより様々な結果を得ることができた。 地理的加重一般化線形モデルを用いて日本の主要な部位に関するリスク曲面の推定結果は、過去の疫学的知見をほぼ再現するものであった。特に特徴的であったのは、年齢と時代を変数としているにもかかわらず、出生コホート効果に関する再現にも成功した点(肝臓や肺など)である。また乳がんの年齢効果に関する二峰性といった複雑な特徴も再現できた。以上の結果を踏まえると、がんの時間に伴う挙動に関する特徴を観察する際に、本研究で提案するようなリスクの表現方法が極めて有効であることが判明した。 リスク曲面の推定に付随する結果として、曲面の外挿による将来予測を試みた。この内容に関しては、その結果が正しいかどうかのチェックが不可能であるが(実際に将来になってみないと正解が分からない)、他研究による報告と概ね一致していること、あるいは短期の予測に関してベンチーマーク・チェックを行った結果から、妥当な予測値が得られていると判断した。今後は数ある将来予測法における一候補として考えても良いと思われる。
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