平成24年度・25年度の検討結果から、飲酒量各群とインスリン抵抗性(HOMA-IR)との関連は認められなかった。高齢者では少量飲酒群でアディポネクチン、高分子量アディポネクチン低下との関連が認められた。高齢者においてはアディポネクチン高値が必ずしも肯定的な効果とは限らず、アディポネクチン高値で死亡や要介護といったイベントとの関連が報告されている。そのため平成26年度は、生活習慣やHR-QOLなどの背景要因と少量飲酒によるアディポネクチンの低下について解析を行った。 結果:1. 高齢者では男性T1、女性T2という少量飲酒群でアディポネクチン低値のオッズ比が高かった(男性:T1 odds ratio=3.17,95%CI:1.04-9.68. 女性:T2 odds ratio=3.52,95%CI:0.99-13.50)。2.高齢少量飲酒群は、運動などを生活習慣に取り入れている傾向がみられた。3.アディポネクチン低値群は中央値より低値であるだけで、<4mg/dlという病的な低値の頻度は少なかった。 考察:高齢者における少量飲酒は、アディポネクチンを低下させて健康に悪影響を及ぼすというよりは、高齢者のアディポネクチン高値と予後の関連に示されるような加齢などの影響によるアディポネクチン上昇を抑制して、良い働きをしている可能性も考えられる。 結論:非高齢者の少量飲酒はアディポネクチン低下を抑制し、高齢者の少量飲酒はアディポネクチン上昇を抑制して、一見逆方向に働いているように見える。しかし非高齢者ではアディポネクチンが低いことが問題、高齢者ではアディポネクチンが高いことが問題になることを考えると、少量飲酒は高齢者でも非高齢者でも生活習慣病の抑制や予後の改善等に役立っている可能性が示唆された。
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