平成26年度は、研究計画に基づき、人口動態保管統計における都道府県別の性・年齢階級別自殺率のデータを直近年(1993~2011年)を含めて、自殺による損失寿命をYPLL65(Years of Potential Lief Lost 65)を算出し、その経年変化のパターンをクラスター分析により類型化した。全国の損失寿命の経年推移との高低から判断し平成25年度までに得られた結果と同様の傾向を示していた。 自殺による損失寿命の関連要因を探る目的から地域相関研究を実施し、人口・世帯、社会・経済、医療・福祉要因に大別して、47都道府県のデータから相関係数を求め、統計学的に有意な相関を示す要因について経年的な特徴を明らかにした。主な結果として、男性では地域経済や雇用環境の影響および個人経済、家計水準の影響を受けていた。一方、女性では地域経済や雇用環境の影響は、自殺が急増した1998年以降では弱く影響していたものの、他の要因も含め、経済要因の影響は極めて弱いと考えられた。医療要因では統合失調症の受療率との関連が示唆された。これらの地域相関研究の結果から明らかにされた自殺関連要因は、自殺の若年化との関連で今後の研究を進める重要な仮説を提供するが、地域相関研究による因果関係の追求の限界もあり、今後の検討が必要である。一方で、本研究では、自殺の若年化との関連で雇用環境に着目した分析を進めてきたが、前年度までに完全失業率や非正規雇用と自殺率のリスクが年齢・時代・世代の影響を受けていることを明らかにし、本年度はその検証も含め、雇用形態別の自殺率について、年齢階級別の非正規雇用者割合の年次推移について観察し、若年層における非正規雇用割合の変動と自殺率との変動が連動していることを示唆する結果を得た。
|