研究実績の概要 |
岩手県北・沿岸の二戸・久慈・宮古保健医療圏(人口約23万人)を対象に平成14年に開始した岩手県北地域コホート研究では初回調査で収集した様々な要因とその後の死亡・罹患情報との関連を検討している。今回、東日本大震災の発災を受け、同コホート対象地域及び対象地域外の釜石・気仙保健医療圏について、国土地理院の2万5千分の1浸水範囲概況図及びデジタル標高地形図、google map及びストリートビューを用いて行政区毎に津波浸水状況を推定し、国勢調査による居住人口及び昼間人口から市町村毎に浸水人口割合及び浸水昼間人口割合を算出した。震災により地域に加わった負荷として直接的な指標と考えられる震災死亡数や浸水人口割合、また、間接的な指標として震災後の全死亡率、循環器疾患死亡率及び罹患率、震災関連死亡数、浸水昼間人口割合などが挙げられる。今回求めた浸水割合では大槌町(人口70.7%,昼間人口72.4%)、山田町(60.0,61.4)、陸前高田市(34.9,41.9)、大船渡市(26.4,31.7)、宮古市(18.6,27.4)、釜石市(18.6,21.9)の順に高かった。死亡統計では山田、宮古、釜石でH24年も粗死亡率高値の傾向が続いていたが大槌では震災前と比べて減少していた。岩手県および岩手県医師会による脳卒中罹患統計においても2011年震災後の脳卒中の年齢調整罹患率は山田で対前年比61%増となったが浸水人口割合の高い他地域ではむしろ減少していた。同地域にて行われている地域疾病登録情報は当該年度分が公表されたところであり、今後の同報告およびコホート調査結果と照合してさらに検討を進めて公表する。
|