研究課題/領域番号 |
24590813
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
黒崎 直子 千葉工業大学, 工学部, 教授 (60337706)
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研究分担者 |
黒崎 久仁彦 東邦大学, 医学部, 教授 (60240701)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際保健学 |
研究概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)のゲノムは約3.2kbあり,その遺伝子配列の8%の違いからGenotype AからJまでの9つの遺伝子型(Genotype IはCの亜型)に分類されている.また,これらの遺伝子型や亜型には地域特異性が存在することも明らかとなっている.遺伝子型の違いは,HBV感染後の症状の経過やインターフェロンの感受性,核酸アナログ製剤に対する耐性ウイルスの出現率などが異なる.そのため,HBV感染の有無と遺伝子型を同定することは,疫学的にも臨床的にも非常に重要である. メキシコを含む中南米はGenotype FとGenotype Hの感染が多いことが知られている.メキシコには,コロンブス以降の欧州渡来人や奴隷として連れてこられたアフリカ系の人たちとその混血,そして純系を保ちながらも任意の交配集団としての集団サイズを維持してきたと考えられるメキシコ先住民集団などがいるが,これまでメキシコ先住民集団におけるHBVの感染調査は行われていなかった. そこで本研究では,メキシコの先住民族のDNAからHBVの遺伝子を検出するとともに,その遺伝子型を同定することを目的とした.まずHBVの遺伝子を検出するために,HBV粒子の最外殻であるエンベロープタンパク質をコードするS遺伝子に含まれる major S領域を標的としたプライマーを設計した.この標的部位はHBVの全遺伝子型に共通の配列であるため,ウイルスのサブタイプに左右されずにHBV遺伝子を検出できる.次に,メキシコの先住民族のDNAサンプルを用いて,nested PCRを行いHBV遺伝子の存在を確認した.メキシコの先住民族のDNAサンプルのうち,一部のサンプルについて検討したところ,複数のサンプルにおいてHBV遺伝子の存在が確認されたことから,今回調査した集団においてHBV感染が明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液由来のDNAサンプルよりHBVの遺伝子を検出するために,HBV粒子の最外殻であるエンベロープタンパク質をコードするS遺伝子に含まれる major S領域を標的としたプライマーを設計した.この標的部位は,HBVの全遺伝子型に共通の配列であるため,ウイルスのサブタイプに左右されずにHBV遺伝子を検出できる.このプライマーを用いて実際にメキシコの先住民族のDNAサンプルについてnested PCRを行いHBV遺伝子の存在を確認することができた. また,購入した超高感度ルミノメーターを用いてウイルス遺伝子由来のタンパク質の発現を検出することもできたことから,おおむね計画通りに研究は進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
接触感染を主経路とする広く一般的なウイルスであり、ウイルス・ゲノムに様々なタイプが存在すると共に,その頻度に集団差が存在することが既に知られているB型肝炎ウイルス以外のウイルス(ヘルペスウイルス,成人T細胞白血病ウイルス,EBウイルス)について,中米現代先住民族を対象に,それらウイルス遺伝子の検出とゲノムタイプの決定をおこなう. また,純系を保ちながらも任意の交配集団としての集団サイズを維持してきたと考えられている中米現代先住民族集団のミトコンドリアゲノム全塩基配列を決定し,配列情報の数理的解析によって中米現代先住民族の集団内遺伝的多様性を求める.
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次年度の研究費の使用計画 |
中米現代先住民族集団のミトコンドリアゲノム全塩基配列を決定する際に必要な試薬・器具類ならびにウイルス遺伝子の検出に必要な試薬・器具類を購入する計画である. また,得られた研究成果を公表するために学会発表や論文投稿を予定しているので,その際に必要な旅費,英文校正,別刷り印刷代等を計画している.
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