人口構成の急激な高齢化によって、在宅医療の重要性が増している。また在宅医療の中でも高齢化の進行に伴い在宅死の増加は不可避であり、特に重要な関心事となっている。しかしこの在宅死の現状や予測因子を前向きに検討したデータは私たちの知る限り存在しない。そこで本研究では、多施設共同の在宅高齢者コホートを構築し追跡調査を行うことによって、特に在宅死や緊急対応等の医療サービス受療についての頻度やそれに関わる因子を明らかにすることを目的とした。
平成25年2月から在宅高齢者患者の新規登録を開始した。現時点での共同施設としては13か所である。各参加施設にデータ入力を促し、平成27年5月31日の時点においてのデータをクリーニングした上で、中間集計を行った。その時点で642名の対象者が各施設で登録されている。そのうちデータ入力済みの612名に関しては女性55%(338名)、年齢83.0+-8.1歳、担癌状態24%(147名)、生活保護世帯14%(85名)であった。この時点での死亡数は196名、0.38人/人年の死亡が確認された。死亡場所としては病院107名、在宅78名、施設8名であった。また臨時往診は552件、即ち1.31件/人年(入院期間を除いた総観察期間で算出)であり、同様に入院は314回、0.74回/人年であった。
その後も登録を継続しており、平成28年3月7日現在の登録者数は826件となっている。当初の計画では、平成24年10月をめどに新規に在宅管理が開始された高齢者の登録を開始する予定であったが、倫理委員会との間で研究プロトコールの小変更や、それに対応するための期間が必要となったため、実際に患者登録が開始されたのが平成25年2月となった。そのため助成は今年度で終了であるが、平成29年1月31日まで最長4年の追跡を行い、複雑性、ADL、栄養状態、認知機能、抑うつ状態等とエンドポイントとの関連を検討する予定である。
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