研究課題/領域番号 |
24590820
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
井原 一成 東邦大学, 医学部, 講師 (10266083)
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研究分担者 |
森信 繁 高知大学, 教育研究部・医療学系, 教授 (30191042)
吉田 英世 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 自立促進と介護予防チーム, 研究部長 (00242735)
大渕 修一 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 福祉と生活ケア研究チーム, 専門副部長 (50265740)
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キーワード | 疫学 / 大うつ病性障害 / 小うつ病性障害 / BDNF / 高齢者 / SCID / GRID-HAMD / エピジェネティクス |
研究概要 |
本研究は、平成24年度に健康調査を行うことで得られるデータと、23年度に実施済みの健康調査のデータとを用いて断面調査のデザインで分析を行う疫学的研究として計画された。しかし、24年度に得たうつ病サンプル50人のうち大うつ病性障害の者が9人にとどまったため、25年度は大うつ病性障害を得るための追加調査を行った。 25年度の調査では、研究分担者の吉田・大渕が実施する疫学調査に併せて、高齢者791人を対照にうつ尺度と認知機能検査を用いてスクリーニングを行い、その陽性者に後日行う専門医による面接への受診を勧奨した。専門医面接の参加者は76人で、Structured Clinical Interview for DSM-IVのモジュールAとJで感情障害に該当しかつGRID-HAMDで7点以上の者に最終的な診断を与えた。これにより、未治療で臨床的に意義のあるうつ病16人(大うつ病性障害7人と小うつ病性障害9人)を同定することができた。また吉田により血液が凍結保管された。 研究分担研究者の森信は23年度に実施済みの健康調査時の血液についてBDNFプロモーターのDNAメチル化障害の再分析を行った。これは24年度に行った分析でDNAの抽出が出来なかったサンプルがあったことによる。 井原は、再検査後のメチル化障害の情報と診断情報及び疫学調査結果を統合し統計学的分析を行った。メチル化障害のパターンの違いにより大うつ病は2群に分かれ、一方は認知機能の低下(特に遅延再生の低下)に特徴づけられる群で、他方はMMSE値は健常者並に保たれていますが物忘れ感が強く口渇が際だつ群であった。小うつ病はメチル化障害のパターンの違いにより3群に分かれ、その一つは認知機能のうち集中力の低下していることが特徴で、他の2群は両方とも認知機能の低下は認められないという点で共通しているが外出頻度の低下の有無で違いが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、BDNFプロモーターのメチル化障害の測定のためにDNAの抽出が必要となるが、疫学調査で得られた血液からのDNAの抽出が容易ではなかった。抽出方法における工夫が行われ結果的には抽出出来たが、これまでに蓄積した全てのメチル化障害の測定は出来なかった。標的としている疾患である大うつ病性障害のケース及び対照となる健常者の把握数が必ずしも十分に確保出来ていないこととあわせて考えると「概ね順調に進展している」とは評価しがたいと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに蓄積した大うつ病性障害の症例と対照群の凍結された保存血を用いてBDNFプロモーターのメチル化障害の測定を完了する。 また統計学的により頑健な結果を得るために症例と対照双方の人数増を図るため平成26年度に追加サンプルを得るための疫学調査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
追加で疫学調査を実施する経費に充てるため前倒し支払いを請求し250000円を受領したが、予定額よりも若干人件費の経費が少なかったため次年度使用額が発生した。 次年度には疫学調査の再度の追加を見込んでおり、その実施経費にあてる予定である。
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