研究課題/領域番号 |
24590825
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研究機関 | 北海道立衛生研究所 |
研究代表者 |
石田 勢津子 北海道立衛生研究所, 感染症部ウイルスG, 主幹 (70414315)
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研究分担者 |
吉澄 志磨 北海道立衛生研究所, 感染症部ウイルスG, 腸管系ウイルス主査 (90414317)
後藤 明子 北海道立衛生研究所, 感染症部ウイルスG, 研究職員 (60414322)
長野 秀樹 北海道立衛生研究所, 企画総務部企画情報G, 主幹 (30189146)
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キーワード | E型肝炎ウイルス / 分子疫学 |
研究概要 |
平成25年度にE型肝炎発生届のあったヒト由来の12 名15検体についてRT-PCRによるウイルス遺伝子検出を試みた。ORF2領域検出用プライマーで増幅された産物の塩基配列を決定し、分子疫学的解析を行った。 陽性となったヒト検体11検体からの9株は4型、1株は3型に分類された。陰性の4検体、型別に用いる領域を増幅できなかった1検体は発症から3週間以上経過したものであったが、より早い時期に採取された血清の再検査で2 検体が陽性または型別可能となり、確実な検出には早期の検体採取が必要と思われた。無症状病原体保有者由来1株は3型であり、発症例は全て4型であった。2013年9月末~11月下旬に1保健所管内において5件の届出があった。5件中4件が陽性となりその配列は互いに100%一致した。この配列は、2011年12月~2012年2月に道央地域において集中した事例由来の配列とも99%の類似を見せ、2009年に札幌近郊で検出された株群とも極めて高い相同性を示した。共通の原因食品の存在も示唆されたが、疫学調査による裏付けは得られなかった。しかしながら、2009~2013年にわたって道央地域を中心に、ほぼ一致した配列のウイルス株が維持されていることが明らかになったので、この先も注視したい。E型肝炎の潜伏期間は平均6週間程度と長く感染源の追究は極めて困難となる。分子疫学的解析は、感染者間及び感染源・感染経路を繋ぐ有用な方法と思われる。 発症日と検体採取日の情報の得られた73検体について病日とRT-PCR、IgA、IgM抗体による判定結果を検討した。発症日から4週まではRT―PCRでほぼ陽性となり、この期間にあっては遺伝子検出が可能なことが示された。2種類の抗HEV抗体は同様な挙動を示し、第40病日まで継続して検出できた。これらの結果から、発症後4週を過ぎた症例については血清診断が有効と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
E型肝炎発生動向調査において、届け出のあったヒトの発症例と無症状病原体保有者からウイルス遺伝子を検出し、分子疫学的解析を継続している。配列の相同性が99~100%と極めて高いウイルス株が、2009~2013年の間、近接した地域内で維持されており、時期を集中して患者が発生していることが明らかになった。 E型肝炎の診断基準方法である遺伝子検出法と抗体検査について、陽性判定が可能な期間を比較・検討したことにより、適切な検体採取時期についての情報が得られた。 新規の蛍光検出/型別法については、反応条件の検討を進め、ほぼ確立できたので、各種検体を用いての確認に移行する。
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今後の研究の推進方策 |
配列の相同性が99~100%と極めて高いウイルス株が、近接した地域内で数年間にわたって維持され、2カ月間など時期を集中して患者が発生していることが明らかになった。この系統のウイルス株の出現状況に注視して、喫食状況など疫学情報を集め、さらにはブタのウイルス保有状況調査を進めるなど、感染源の究明を目指したい。 E型肝炎の診断基準である遺伝子検出法と抗体検査の2方法について、利点と問題点、遺伝子型や臨床症状との関係性について解析を行い、速やかな診断のためのデータを蓄積する。 蛍光による新規検出/型別法については、各種検体を用いての実用性の検討と、既存の方法との比較を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ整理、論文執筆、情報収集・解析の目的でコンピュータとソフトウェアを購入するにあたり、マイクロソフト社のXPサポート終了時期とも重なったため、調達に時間を要し、予算執行をスムーズに行えなかった。 E型肝炎発生動向調査として、診断されたヒト検体について引き続きウイルス遺伝子検出と塩基配列決定、分子疫学的解析を行う。保存してあるヒト臨床検体について、遺伝子検出と抗体検査を進め、判定結果と性状を解析する。高感度検出法の実用性検討を各種、多数の検体について行うために必要な試薬、器具類を購入する。情報収集、成果発表のため、学会に参加、論文を投稿する。
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