研究課題/領域番号 |
24590826
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
西野 善一 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん疫学・予防研究部, 部長 (70302099)
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キーワード | 卵巣がん / 疫学 / 危険因子 |
研究概要 |
本研究は日本人における知見が乏しい卵巣がんの危険因子について宮城県立がんセンターの入院患者より症例および対照を選定した症例対照研究のデザインにより組織型別に検討し、卵巣がんの成因の究明や予防手段の確立に寄与することを目的とするものである。今年度は卵巣がん罹患者および対照への質問紙調査を継続するとともに、解析用データセットが作成された1997-2011年症例について卵巣がんのうち上皮性悪性腫瘍のリスクと家族歴、喫煙、受動喫煙、飲酒などの生活習慣、体格、生殖歴等の特性との関連について検討を行った。 解析対象期間における30歳以上卵巣がん悪性症例は328例であり、うち上皮性悪性腫瘍は290例であった。そのうち、漿液性腺癌が83例、粘液性腺癌が37例、類内膜腺癌が44例、明細胞腺癌が76例、腺癌詳細不明が35例、組織型が特定されているその他の上皮性悪性腫瘍が7例、組織型が特定されていない上皮性悪性腫瘍が8例であった。 これらの上皮性悪性腫瘍290例と対照3030例についてロジスティックモデルを用いて年齢を含む多変量補正によるオッズ比を算出することにより危険因子の検討を行った。喫煙、非喫煙症例における受動喫煙、飲酒との間では有意な関連を認めなかった。初潮年齢の上昇ともに有意なリスク低下を認めるとともに、未産婦の有意なリスク上昇、出産数の増加、早い初産年齢に伴う有意なリスク低下を認めた。授乳とは有意な関連を認めなかった。体格との関連では、高身長による有意なリスク上昇(身長1cm増加に対するオッズ比1.025、p=0.046)を認めたのに対して、体重、Body Mass Index (BMI)との間には有意な関連を認めなかった。また、卵巣がんの家族歴については、母親もしくは姉妹に卵巣がんの既往を持つ者で有意なリスクの上昇を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
卵巣がん罹患者および対照への質問紙調査の実施については当初の予定通り進捗している。解析用データセットの作成については2011年入院症例までについては完了したが、それ以降の症例については、対照となるデータについて解析除外対象となるかを判断するために必要な詳細病名の把握処理作業が遅れている等の理由によりデータセットに含めるまでに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、2012年以降の入院症例を含めて解析用データセットを作成した上で、当初の計画通り、対象者の食品・栄養素摂取、体格(身長、体重、Body Mass Index (BMI))、喫煙・受動喫煙、飲酒、運動、初潮年齢、出産歴、過去の授乳状況、女性ホルモン剤、経口避妊薬の服用歴、家族歴等と卵巣がん罹患リスクとの関連を組織型別(serous carcinoma, endometrioid carcinoma, mucinous carcinoma, clear cell carcinoma)に症例対照研究の手法を用いて解析する。具体的には、各要因について交絡となる要因を補正した上で、ロジスティックモデルによりオッズ比ならびに95%信頼区間を算出して各組織型の危険因子の類似点および相違点を明らかにする。これらの解析は統計ソフトプログラムSASを用いて実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
解析用データセットの作成が予定より遅れ人件費の支出額が当初計画より少なくなった等の理由により次年度支出額が生じた。 今年度は昨年度までに終える予定であった確定データセットの作成、ならびに、解析、成果発表、対象者が記入した質問紙の保存整理に必要な費用に対して主に支出する。具体的には、データの入力、質問紙の整理等を実施するために必要な人件費、成果発表旅費、研究全般の遂行にあたって必要となる消耗品の購入等に使用する。
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