本研究は、卵巣がんの成因の究明や予防手段の確立に寄与することを目的として、宮城県立がんセンターの1997年以降の入院患者より症例および対照を選定した症例対照研究のデザインにより卵巣がんの危険因子を組織型別に検討するものである。 平成26年度は、2012年と2013年に診断され質問紙調査に回答した卵巣がん症例ならびに同時期に入院した対照となる非がん症例を解析対象に加えた上で、1997-2013年症例について卵巣がんのうち上皮性悪性腫瘍および各組織型と生活習慣、体格、生殖歴等との関連について検討を行った。解析はロジスティックモデルを用い、多要因補正によるオッズ比を算出した。 解析対象とした20-79歳の卵巣上皮性悪性腫瘍は315例であり、うち漿液性腺癌93例、粘液性腺癌37例、類内膜腺癌49例、明細胞腺癌82例、腺癌詳細不明37例、組織型が特定されているその他の上皮性悪性腫瘍が7例、組織型が特定されていない上皮性悪性腫瘍が10例であった。上皮性悪性腫瘍全体では、早い初経年齢、未産婦および経口避妊薬以外の女性ホルモン剤使用でのリスク上昇を認めた。組織型別には特に明細胞腺癌でこれらの要因による顕著なリスク上昇を示した。また、明細胞腺癌では経産婦において出産数の増加に伴うリスクの低下を認めた。母乳による授乳は上皮性悪性腫瘍全体および各組織型でリスクの低下を認めるものの有意ではなかった。食事要因は、上皮性悪性腫瘍全体で牛乳、鮮魚、大豆類の摂取頻度の増加によりリスクが低下する傾向を認めた。これらの食品について組織型ごとの比較で傾向に関し有意な違いを認めなかった。
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